【新年創刊特別号】先達が築き上げた得難い遺産を継承発展=在サンパウロ日本国総領事  桑名 良輔

桑名良輔在サンパウロ総領事

 新年にあたり、創刊されたブラジル日報の読者の皆様に謹んでご挨拶申し上げます。今回の創刊により、ブラジルでの日本語による情報発信が継続されることは大変喜ばしく、ご尽力頂いた皆様に心より感謝致します。
 約2年前に発生し瞬く間に世界に広がったコロナ禍は、私たちに大きな困難をもたらしました。不幸にして亡くなられた方々とご遺族に改めて哀悼の意を表すと共に、今も病床にいる方々にお見舞い申し上げます。
 私達の生活は大きな影響を受けましたが、私はこの間に2つのことを痛感しました。一つは社会隔離が続く中、人との直接の接触(リアル)がいかに重要かということ。もう一つは、今はオンライン(デジタル)でいつでもどこでも瞬時につなぐことができるということです。
 当地でも文協等が多くのオンライン・イベントを開催。従来は参加が困難だった遠隔地も含め幅広い参加が得られています。最近はリアルとデジタルを融合したハイブリッドの行事も開催されています。今年再開される県連の「日本祭り」もハイブリッドで準備が進んでいます。方法は変化しても「人と繋がる」という私達人間の本質は変わりません。
 私がサンパウロに着任して約1年半ですが、今改めて感じることは、つきなみですが「日伯関係が特別な関係である」こと、そして「それは世界最大の当地日系社会の存在による」ということです。当地で生活するとこのことを実感します。当地での日本と日系社会への高い評価は、先達が築き上げた得難い遺産で、これを受け継ぎ発展させていく事は私達の使命です。
 世界は急速に変化しており、日系社会でも世代交代が進み、2世、3世から、4世そして次の世代へと移っています。新しい世代では、日本語を話さず、ブラジルでブラジル人として生きていく中で日系のアイデンティティーや日系社会とのつながりが希薄になっております。しかし、こうした若い世代が次世代の日系社会を担う中核であるということもまた事実です。
 そして、こうした若い世代を応援し日伯の絆を更に強化するために重要なのが人的交流の促進です。今はコロナ禍により人の往来は制限されていますが、早期に感染が収束し日伯間の往来が正常化することを心より願っています。
 また、在日ブラジル人コミュニティは、すでに30年を超える歴史を数え、中には言葉や習慣の違いで困難を抱える方もおり、今日日伯両国において解決すべき課題も存在します。
 私共、総領事館としても、皆様方そして日伯の関係機関と共に力を合わせて、これらの課題の解決も含め、日伯関係の促進に向けて努力する所存です。もちろんブラジル日報だけでなく、共に創刊されたポルトガル語の「ジョルナウ・ニッポン」にも大きな役割を期待しています。
 最後になりますが、新年の皆様のご健康、ご多幸とご発展、そして日伯関係の更なる発展を祈念して年初のご挨拶とさせて頂ます。

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