【新年創刊特別号】変革のチャンス、更なる躍進を期待=公益財団法人海外日系人協会理事長 田中 克之

田中克之理事長

 ブラジル日報の発刊にあたり、心よりお祝いを申し上げます。
 前身であるニッケイ新聞は、戦後、認識派の新聞として発刊されたパウリスタ新聞、日伯毎日新聞の両紙を母体とし、2019年にサンパウロ新聞が廃刊されてからは、ブラジルにおける唯一の邦字紙として、日本語の情報を必要とする人々にとって単なる情報源以上の存在となってこられました。
 日本語読者である1世の減少に際しては、2、3世読者、日本語学習者向けに、紙面漢字にフリガナをつけたり、WEB版に力を入れたり、様々な経営努力を続けられ、さらにコロナ禍においても、その報道機関としての使命を放棄することなく情報発信を継続されました。
 日本に配信されるWEBニュースにおいて、ブラジル関連のもののほとんどが、ニッケイ新聞の記事であったことは、記憶に新しいところです。これまでの偉業に対し、改めて敬意を表したいと思います。
 この度、そのニッケイ新聞が、装いも新たにブラジル日報として生まれかわり、より充実した体制で、発刊されることは、一つの時代の節目とも言えますが、新たな変革のチャンスでもあるのではないでしょうか。
 わたくし共が主催し、毎年実施しております海外日系人大会も、昨年は、コロナ禍で、実際に日本に参集することはかなわず、10月にオンラインにより実施いたしましたが、2日目のシンポジウムでは、「日系メディアと博物館の役割」を取り上げました。
 各国で移住者が作り上げた日系コミュニティにおいて、邦字紙は無くてはないものでありましたが、コミュニティの成熟、現地社会への同化、現地語化という過程において、邦字紙の役割は低下、読者の減少が進みました。
 しかしながら、邦字紙を、新聞、雑誌、博物館・資料館などを含め、日系社会、ニッケイのレガシーを収集し、それらを発信する媒介・メディアであると捉え直した場合、日系メディアとしての邦字紙は、まだまだ可能性があるのではないかと個人的に思った次第です。
 新しく発刊された貴紙が、ブラジルにおいては、駐在員を含めた日本語読者層に、日本人移民の業績や日系コミュニティの情報を伝え、日系社会との架け橋を任じていること。ポルトガル語媒体として、世代を経てブラジル社会へ統合されていく日系社会に日系アイデンティが継承されることを目指していることは、大会で導き出された日系メディアの役割と完全に合致しているものと考えます。
 さらに、日本や在日の日系コミュニティに向けても情報を発信していただくことは、若い世代の日系アイデンティティの涵養や、日本人のブラジルファンを増やすことにもつながると確信します。
 今後の、貴紙のさらなる躍進を心より期待いたしております。

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