パラナ州クリチーバにある兵庫県ブラジル事務所(永田展之所長)が3月末をもって閉鎖される見込みである事が同事務所の発表によりわかった。閉鎖にあたり、3月中に永田展之所長が日本に帰任予定。閉鎖後は連絡員1人の配属が検討されているという。事務所閉鎖は兵庫県の方針で、昨年12月16日に齋藤元彦県知事が記者会見で発表した縮小や廃止を行う事業の一つ。17日までパブリックコメントを募り最終案にまとめて2月の県議会で提案されるため、4月以降については多くが未定状態だ。
同事務所へ電話取材を行うと、永田所長は「これまで同様の交流が続いて欲しいです。県も持続可能な交流を検討していますが、事務所閉鎖後はどの程度の業務範囲となるか現段階で未定です」と説明した。
昨年にはパラナ州政府との「道の駅」事業を開始。初めに3箇所設置しモデルケースとして次第に全州へ展開していく計画だ。このほか、同州農家へハウスを用いた苺の促成栽培技術指導へ協力するなど「パートナーとして頼もしい」と州政府と信頼を得るまでになっていた。
さらに総領事館やサンパウロ市ジャパン・ハウス、ジェトロとの兵庫県産品に関するイベントのほか、兵庫県内の中小企業からの相談を受けて伯国内の販路開拓を行うなど手広く事業を行ってきた。昨年は13社から伯国内販路開拓に関する相談を受けている。
海外進出を望む中小企業の多くは初めのうち中国や欧州を目指すが、薄利多売の中国や実績を重視する欧州は中小企業の進出が難しい場合もある。そこで「良いものは良い」と評価するブラジルが受け皿となる事もあるという。
永田所長は「連絡員1人となると縮小せざるを得ないのでは」と見解を示し「経済交流が活発化してきて、中小企業への販路開拓やビジネスチャンスへ自信を持ってPR出来る力がつき、個人的にはこれからという所でした」と残念がる。
ブラジル事務所のほか豪州事務所も閉鎖予定だ。ワシントン・香港・パリ事務所は一旦維持となるが、今後のあり方を検討する予定。今回発表された行財政運営方針の見直し案では県の支出削減のために59事業の縮小や廃止が一次案として組み込まれている。
2個所の海外事務所閉鎖について齋藤知事は記者会見で「現在、県事務所が5つあり、他県と比べ非常に多い。財政が良ければ国際交流の一つのポイントとなるが、財政が悪い状況。JICAやジェトロといった機関もある。ここまで直営で行う必要があるかがポイントとなった」と説明している。
県はコロナ禍をふまえて税収の見通しが鈍化すると見込みという向かい風の中で、財政健全化を模索している。2箇所の事務所閉鎖に加え、今回縮小や廃止を予定している59事業の中には「姉妹州省との周年事業」や「私費外国人留学生奨学金支給事業」などの見直しを行う予定だという。
ブラジル日本移民100周年を目前に控えた2006年に、日伯間経済交流の増加を見込んで正式な県事務所として業務を開始。それ以前は連絡事務所として同州と兵庫県が姉妹州県提携を結んだ1970年から設置されていた。
パラナ州経済友好使節団を連れて25回も訪日し、欠かさずに兵庫県に表敬訪問している西森ルイス連邦下議は、「今までしっかりと交流を重ねて、昨年は姉妹州県50周年を迎えたところだったのに、事務所閉鎖となるのは本当に残念」とコメントした。「ブラジル移民にとって神戸は出発点であり、とても大事な場所。永田所長が頑張られた成果がこれから出るというところだった。でも県の方針に我々は口出しできない。新たに関係を作り直していきたい」と前向きに述べた。
改革方針については兵庫県のホームページ上(https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk23/publiccoment.html)でパブリックコメントを17日まで募り、最終案にまとめて2月の県議会で提案される予定。
サビアのひとり言
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パラナ州にある兵庫県ブラジル事務所は、ブラジル内にある唯一の県事務所。姉妹州県提携のほか、加古川市とマリンガ市、西宮市とロンドリーナ市、姫路市とクリチーバ市、淡路市とパラナグア市が姉妹都市提携を結んでいる。移民110年記念の際には、マリンガ市の式典会場で姉妹都市展示が行われ、来訪された眞子様も姉妹都市交流の活発さに感心されたそう。昨年11月にはフェイスブックを利用する有志が「Amigos de Hyogo-Japão」(ひょうご友好会)を開設。500人が参加するなど市民レベルでも交流が活発だ。財政や渡航の難しさはあるが、なるべく交流は維持してほしいところ。