サンパウロ市ブタンタン研究所が、中国製のコロナワクチン「コロナバック」の子供への接種をめぐり、国家衛生監督庁(ANVISA)と掛け合っている。現時点では承認を巡る投票日時などは決められていないが、使用許可が出れば、ファイザー社製では5歳以上の接種対象を3歳まで下げることができる。18日付現地紙が報じている。
ブタンタン研究所は昨年12月に、3~17歳児への使用許可を正式に申請していた。ANVISAはより詳細なデータの提出を求めていたが、先週からは承認に向けた交渉が本格化している。
13日にはブタンタン研究所とANVISA、チリの調査員、コロナバックの製造元の中国シノバック社、ブラジル感染症学会(SBI)、ブラジル小児科学会(SBP)の代表らが集まり、ビデオ会議が行われた。
会議の議題は3〜17歳を対象にしたコロナバックの使用についてで、既に同年齢層へのコロナバックの接種を行っているチリのデータも提示された。
小児用のコロナバックはチリの他、中国、インドネシア、エクアドル、香港、カンボジアで使用されている。
だが、ANVISAは、「資料が不足している」とし、シノバック社にさらなる情報の提供を求めた。ブタンタン研究所とANVISAは18日も、再度の会議を行っている。
ブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長はコロナバックの子供への効用に自信を見せ、「コロナバックは中国2億1100万人の子供たちに使われており、いかなるワクチンよりも安全性が高い」と主張している。
だが、SBIのレナト・クフォウリ氏からは「オミクロン株の出現により、これまでのデータの信ぴょう性が見えにくくなっている」との声、SBPのマルコ・アウレーリオ・パラッチ・サファディ氏からも「データが古く、現実に対応できるのか」との指摘が出ており、事態を難しくしている。
マルセロ・ケイロガ保健相は17日、CNNの取材に対し、「急ぐ話ではない」「米国の食品医薬品局(FDA)やヨーロッパ医薬品庁(EMA)はファイザー社の小児用ワクチンしか認めていない」としつつ、「ANVISAが認めればコロナバックの小児使用を行うつもりだ」と語った。
コロナバックはボルソナロ大統領と敵対するジョアン・ドリア・サンパウロ州知事が推奨するワクチンであることもあって、保健省は同ワクチンの使用にかねてから消極的だ。大人用のコロナバックはブラジルで最初に使われたが、承認計画がボルソナロ大統領によって遅らされていた経緯も考えると、気になる発言だ。
コーヴァス所長は、仮に今、コロナバックの小児使用が承認されれば、サンパウロ州の子供たちに対して1500万回分、その他の州に1100万回分のワクチンを提供できる状態にあると語っている。