ブラジルが第三の故郷に=サンパウロのアジア系住人の今(5)チベット人編〈7〉=チベット正月が町の名物に

パンデミック前に「エスパッソ・チベット」で開催されていたロサールの様子(ロサールのプロジェクト案内より)
パンデミック前に「エスパッソ・チベット」で開催されていたロサールの様子(ロサールのプロジェクト案内より)

 リオグランデ・ド・スル州トレス・コロアスのチベット寺院カドロ・リン(Khadro Ling)で、20年以上行われてきた行事がチベットの正月行事「ロサール」だ。
 中国の旧正月同様、陰暦に従うため毎年日付は異なるが、およそカーニバルの時期と重なる。
 トレス・コロアスは観光名所であるグラマードに隣接し、カーニバルの喧騒を逃れて静かに過ごしたい人の隠れ処的な観光地として密かな人気を博してきた。
 『エスパッソ・チベット』でも、10年以上「ロサール」を祝ってきた。特別な正月料理や飾りつけを用意し、音楽や舞踊のショーやワークショップを開催。多くの観光客が見物に訪れる。

様々な民族グループとチベットのグループが出場するトレス・コロアスでのイベント(ロサールのプロジェクト案内より)
様々な民族グループとチベットのグループが出場するトレス・コロアスでのイベント(ロサールのプロジェクト案内より)

 今年は3月4、5、6日に、久しぶりのロサールイベント実施を計画している。チベットの芸術家や地元のアーティスト、様々な民族グループの代表を招待してショーを盛り上げる。
 町の通りにもロサールの飾りつけが施され、町を挙げての広報で観光客を呼び込む。トレス・コロアスの一大イベントとして期待が寄せられている。
 開会式ではオギェンさんも挨拶する予定で、すっかり町の顔となっている。
 ロサール行事への取り組みは、ユニークな観光事業としての評価だけでなく、南米におけるチベット文化の重要発信地点としても注目を集めている。
 「『エスパッソ・チベット』では、皆さんとチベットへの情熱を分かち合えるのが喜びです」
 かつての苦しみはそっとポケットにしまい、いつも周囲への感謝と笑顔の絶えないオギェンさん。ブラジルはチベット、インドに続く、オギェンさんを成長させてくれる第三の故郷となっている。(終、取材/執筆 大浦智子)

 

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