《記者コラム》ついにやられた!オミクロン=高熱、倦怠感、喉の痛みと咳

「ついにやられた!」――一昨年3月からほぼ2年間、「いつ罹るか」「どんな症状がでるのか」と心配し続けてきた。もちろんコロナだ。
 コラム子は13年前に結核亜種で吐血数回、死にかかったことがある。クリニカス病院で治療を受けたが、「菌が肺全体に拡散しており、根絶は不可能。せめて巣のようになっている右肺上部だけ切除しましょう」と手術を受けたのが、11年前だった。
 そんな経緯から、残る生涯を通じて肺に基礎疾患を持つ状態になった。だから「肺を直撃する感染症にやられたらひとたまりもない」と覚悟していた。しかもコロナ・ウイルスは初期株からデルタ株までは、肺を直撃するタイプだったので戦々恐々としていた。
 最初に体調に異変を感じたのは、第1日目(16日)の夜だった。「風邪の始まりっぽい」感じがして、寝る前にプロポリスの原液を喉の奥に垂らし、水で流し込んだ。普通の風邪なら、結構これが利く。
 だが今回は違った。第2日目(翌17日)朝、起きてみると、頭がボーッとして何も考えられないような倦怠感に襲われた。しかも熱っぽい。体温をはかると37・4度。すぐに編集部に休む旨を連絡し、その間の対処をお願いした。
 第2日目の症状は高熱が出て、頭がボーとして倦怠感に襲われ、ひたすら寝るというという状態。コラム子にしては珍しく食欲が落ち、普段の半分で十分だった。不思議なことに、普通の風邪にありがちな鼻水は出ないし、その時は喉も痛くなく、咳もなかった。
 午後からは熱は38・5度まで上がった。これはマズいと、ひたすら横になって身体を休めた。

「典型的なオミクロン症状ね」

グローボTV局のアナウンサー、レナータ・ヴァスコンセイロスのコロナ体験を報じるメトロポレス紙サイト

 第3日目(18日)、熱は37・4度に下がり、頭のモヤはあまり難じない程度になった。
 この日から喉の奥が痛くなり、少しずつ咳が出はじめ、透明な痰が出るようになった。頭のモヤが少し晴れてきた感じはあった。どうも肺には降りていないようだ。天に感謝するしかない。
 妻から「ネットで調べたら、典型的なオミクロンの症状ね。最初38度の高温、その後、喉の痛み、咳が始まって、4日目ぐらいに熱が収まるって書いてあった」と伝えられ、まさにその通りだと納得した。
 この日、ブラジルの1日のコロナ感染者数は新記録13万人を越えた。
 ちょうど18日晩は、コロナ罹患で休んでいたグローボTV局のアナウンサー、レナータ・ヴァスコンセイロスが復帰後最初の放送だった。
 《私の場合は喉の痛みは軽く、数日で収まった。この頭がボーッとする感覚(sensação de congestionamento)は、普通の風邪とは違った。似てるけど、同じではない(mas que é diferente de uma gripe comum. É parecido, mas não é igual)。倦怠感はなかった。咳は少し、すぐに良くなった》(22日参照、https://www.metropoles.com/entretenimento/televisao/curada-da-covid-renata-vasconcellos-relata-sintomas-da-omicron-no-jn)と体験を語っていた。
 頭がボーッとする症状を「congestionamento」と彼女が表現したのを、ボーッとする頭の中で面白いと思った。普通は「車が渋滞する」とか「鼻が詰まる」などの場合に使う表現だと思っていたので、頭でも使うんだと。
 彼女は1月9日に症状を訴えて急きょその週を休み、1週間余りを経て18日に復帰した。彼女は番組内で「風邪とは違う」と繰り返し危険性を強調した。だが、彼女自身が《似ているけど、同じでない》という程度には十分に似ている。
 30日の報道によれば、同じグローボ局のマジュ・コウチーニョも「コロナ検査で陽性になったため、30日の人気番組ファンタスチコの司会を休んだ」と報じた。日本もそうだが、今まで気をつけていたので罹らなかった人まで感染しているのが特徴だ。

検査結果はやはり陽性

 第4日目(19日)に熱は36・6度まで下がり、体調はかなり回復した。喉の痛み、咳や痰は継続しているが、鼻水は出ない。快方に向かっていることが実感され、だいぶ気分が楽になる。
 この日、ブラジルはパンデミック開始以来、初めて1日の感染者数が20万人を越えた(22日参照、https://www.pragmatismopolitico.com.br/2022/01/brasil-supera-mil-casos-diarios-covid-primeira-vez.html)。
 第5日目(20日)、抗原検査をしてみたら案の定、陽性反応が出た。妻も検査したが陰性だったのでホッとした。毎度のことだが、ウイルスをまき散らしながら自宅療養するコラム子を、感染の危険を乗り越えて看病してくれる妻には感謝のしようもない。
 コラム子はコロナ・ワクチン「アストラ・ゼネカ」を2回接種しているので、いわゆるブレークスルー感染だ。
 日本でも東海テレビニュースで「オミクロンは9割がブレークスルー感染」(22日参照、https://www.tokai-tv.com/tokainews/feature/article_20220112_15046)と報じられている。
 同報道によれば《愛知県がまとめた資料では、10日現在で確認されている感染者1540人のうち、およそ97・3%が咳や発熱、倦怠感などがある軽症と無症状の患者です。
 酸素吸入をしたり、肺炎の症状が確認されたりした中等症はおよそ2・7%。人工呼吸器などでの治療が必要な重症患者は1人と、0・1%にも満たない数字です。
 これまでと比べると、2020年2月からの第1波の時には重症・中等症の人が感染者のうちの32%を占めていて、去年7月からの第5波では5%ほどでした。
 現在の第6波はそれよりも減って2・7%ほどなので、減少傾向がみてとれます》という感じで重症患者は0・1%しかおらず、97・3%が軽症と無症状だという。
 こんなに重症患者が減っているのは、第1にワクチン接種率が上がったこと。そしてウイルス自体の弱毒化が進んだことのようだ。コラム子のように完了接種していれば、たとえ罹っても、すでに重症化しづらくなっているようだ。
 エスタード紙27日付《ワクチンと感染はコロナへの免疫を強化すると研究者》には、ワクチン接種済みの人が感染した場合、発症していない人に比べて10倍もの抗体を持つようになることが研究によって明らかになったとある。
《コロナに対するワクチン接種とコロナ・ウイルスによる自然感染の組み合わせにより、ウイルスに対する免疫力が強化されることが、オレゴン大学(米国)の研究により明らかになった。この研究によると、感染して予防接種を受けた人の血液中の抗体量は、予防接種を受けたが発症していない人のそれと比べて最大で10倍も多いことがわかった。この研究成果は、今週27日(木)、学術誌『Science Immunology』に掲載された》(https://saude.estadao.com.br/noticias/geral,vacina-e-contaminacao-por-covid-reforcam-imunidade-contra-coronavirus-diz-pesquisa,70003962185?utm_source=webpush_notificacao&utm_medium=webpush_notificacao&utm_campaign=webpush_notificacao
 事実、ブラジルでも激増する感染者と比べれば、死者数はさほど増えていない。「死者数グラフ」にあるように、1月28日には7日間平均で471人、29日には4カ月ぶりに500人の大台を超えて524人を記録した。最も少ない時の1月5日の80人からすれば6倍強だが、最悪だった昨年4月の3千人/日超の頃に比べればまだ6分の1だ。
 感染者数グラフが過去最悪18万人超/日となって跳ね上がっているのに比べれば、穏やかな増え方だ。完了接種した人の割合が28日には全人口の約70%に達した。感染しても重篤化しないというワクチン効果は大きいようだ。

見えてきたオミクロンの終わり?

19日付オ・グローボ電子版は《4カ国の下降先行例をみれば、ブラジルもあと2~3週間でピークに達するか》と報じた

 とはいえ、実はオミクロン感染爆発の終わりが見え始めているとの報道も出てきている。
 1月19日付オ・グローボ電子版には、《4カ国の下降先行例をみれば、ブラジルもあと2~3週間でピークに達するか》(23日参照、https://oglobo.globo.com/saude/queda-de-casos-em-outros-paises-indica-que-pico-de-omicron-pode-acontecer-em-duas-tres-semanas-25359136)という予測記事が掲載された。
 南アフリカ、米国、カナダ、オーストラリアの感染爆発先行例を解析した結果、4~6週間は爆発的に増大するが、その後ピークを迎え、同じような勢いで急速に収束する傾向が観測されていると言う。
 そのパターンをブラジルに当てはめれば、年初から感染爆発が起きているので、あと2~3週間でピークを迎え、あとは下降に転じることが予想されているという。
 これが本当なら2月中にピークを越える。吉報だ! だがブラジルの場合、過去の第1波、第2波ともにピークの高止まり傾向が顕著で、3カ月ぐらい続いている。今回も高止まりするなら下降するのは4月以降の可能性もある。

CNNブラジル版サイト22日付電子版《オミクロンはパンデミックを変え、定着するために来た》

 CNNブラジル版サイト1月22日付電子版《オミクロンはパンデミックを変え、定着するために来た》(23日参照、https://www.cnnbrasil.com.br/saude/omicron-mudou-a-pandemia-e-pode-ser-que-tenha-chegado-para-ficar/)によれば、デルタ株になど比べて弱毒化したオミクロン株を〝生きたウイルスワクチン〟として期待する専門家までいる。
《米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、月曜日(17日)、「出現しつつある新変異株には大きなばらつきがあるため、オミクロンが、誰もが期待している〝生きたウイルスワクチン〟となるかどうかは未知数だ」と述べた。
 ファウチは、今週世界経済フォーラムで開催された仮想イベント「ダボス・アジェンダ」で、多くの疫学者が表明している慎重な楽観論を反映し、「そうであってほしい」と語った。さらに、「オミクロンはデルタ株の特徴を持っていないため、世界は〝幸運〟である」と付け加えた》と報道されている。
 1889年からの「ロシア風邪」では約100万人が、1918年からの「スペイン風邪」では数千万人が亡くなり、それぞれのウイルスは今も弱毒化して我々の日常と共にある。子ども時代にそれに数回罹患して免疫を持ち、風土病のようになった。コロナもいずれこの段階に至るとの専門家の意見が紹介された。
 コロナ警告一辺倒のように見えたグローボやCNNが「コロナと共生」という主旨の報道をすること自体に、今までとの違いを感じさせる。
 コラム子の場合、7日目には痰が黄緑色の固めのものに変わり、10日目の抗原検査で陰性になり、その後、おそるおそる職場復帰した。

医療機関の待合室で感染か?

 いつ罹患したのかを想像すると、思い当たる節があった。14日朝、聖市セー広場横の診療所で健康診断を受けた。コラム子が発病した16日から数えて2日前だ。オミクロン株の特徴は潜伏期間(2~3日間)が短いことだ。従来株は4~5日と言われている。
 あの診療所では、窓も空調もない狭い待合室に、30人以上がひしめいて健康診断を待っていた。そのうち2、3人がゴホン、ゴホンとやっているのに気付き、コラム子は普段は布マスクだが、医療用マスクに付け替えた。だが遅すぎたのだろう。すでに、ウイルスが漂う室内の空気を吸いすぎていたようだ。
 健康診断に来る場所だけに、病気の人も多い。さすがに日系の医療機関は大丈夫だろうが、UBS/AMA/UPAなどの公立医療機関では、あり得る状況だ。皆さんもくれぐれも気をつけて。
 ただし、肺に基礎疾患(持病)を持つコラム子にとっては、2年間も毎日メディアで「罹ったら死ぬ」と脅されてきたことを思えば、正直言って「これだけ?」という印象だった。まして重い基礎疾患がなく、ワクチンを完了接種した人であれば、レナータが言うとおり、風邪に《似ているけど、同じでない》程度の病気といえる。ただし高齢者は持病持ちが多いので気をつけた方が良い。
 ウイルス株が変異したのに合わせて、対応も変化させるのが自然の摂理だろう。冷静に危機感をコントロールし、合理的に怖がりたいところだ。
 皆さんもまだ決してガードを下げず、だけど怖がりすぎず、必ずやってくる「新しい日常」を待ちましょう。
 まさか新聞創刊3週間目にこんなことになるとは――。これがバタバタしていた昨年12月や、一番忙しい年始早々でなかったことや、ファウチ博士の言うとおり「デルタ株の特徴を持っていないオミクロン株である幸運」を、改めて天に深々と感謝した。(深)

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