米国「なぜ今ロシアを訪問するのか」=ボルソナロの強行姿勢に反発=ウクライナ侵攻容認と同じ?

2019年、プーチン大統領と会談したボルソナロ大統領(Foto: Divulgação/Palácio do Planalto)

 【既報関連】ボルソナロ大統領が周囲からの反対にも関わらず、ロシア訪問を行おうとしており、米国との外交関係が危うくなりかねない事態が予想されている。7日付現地紙、サイトが報じている。
 ボルソナロ大統領は14日にロシアを訪れる予定で、米国のブリンケン国務長官はブラジルのカルロス・フランサ外相に、「ロシアに行くことを控えるよう」に依頼している。
 だが、同外相は「あくまでもブラジルとロシアの2国間問題だけを扱う」としてロシア行きを行う意向を伝え、ボルソナロ大統領も「どちら側につくということではない」「ウクライナの話はプーチン大統領との対談中には持ち出さない」との意向を示している。
 だが、ブラジル側の対応は、国際社会からはかなり不評だ。米国の外交専門家らは英国の公共放送の支社BBCブラジルに対し、ブラジルの対応は「狂気の沙汰」「車の通りの多い高速道を子供が渡るようなもの」と酷評している。
 現在、問題とされているのは、ロシアがウクライナの国境付近に10万人規模の派兵を行い、軍事侵攻を行う可能性が高まっていることだ。これに対し、米国や北大西洋条約機構(NATO)はウクライナ政府への武器貸与と共に、ポーランドとルーマニアのNATO基地に3千人規模の派兵を行っている。
 米国国務省関係者はBBCブラジルに対し、ブラジルのロシア訪問強行は、「世界に向けてロシアのウクライナ侵攻を是認する、もしくはこの問題に関して全く興味がないとのメッセージを送っているかのようだ」と述べている。

 今回のブラジル側の対応は近年の外交政策と矛盾しているとの声もある。それは、ボルソナロ大統領がトランプ大統領時代に親米路線をとり、NATOを強く支持するようになっていたためだ。
 米国側は、ボルソナロ氏が今回のロシア訪問の旅程の中にハンガリーを含んでいることにも強い不満を示している。それは、ハンガリーでは現在、極右のオルバーン・ヴィクトル首相による独裁政権が敷かれているためで、米国はそれを理由として、12月に同国を訪問予定から外している。
 ブラジルとロシアはBRICS諸国の一員として外交関係を築いているが、貿易相手としてのロシアは上位10国にも入っていない。同国はブラジルが必要とする肥料を輸出しているものの、現時点ではそれ以上の二国間協定などを結ぶ予定はない。
 一方、米国はブラジルにとって主要な貿易相手国であり、その意味で関係悪化がもたらす影響が懸念されている。
 BBCブラジルによると、元駐ブラジル米国大使らは、10月の大統領選でボルソナロ氏が再選されるようなことがあれば、NATO加盟外国としてのブラジルが築いてきた協力関係や世界規模での大西洋軍事同盟構想も反故にされる可能性があると見ているという。
 今月初旬にはアルゼンチンのフェルナンデス大統領もロシア訪問を行ったが、ロシアでの発言内容が漏れて米国側の機嫌を損ねたため、同国は現在、和解に努めている最中だ。

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