教育関連の非政府団体による、読み書きができない6~7歳児が66%増えて4割に達したとの報告は、子供を持つ親や教育関係者に少なからぬショックを与えた。
新型コロナのパンデミックで対面授業継続が困難になり、遠隔授業が主流となった結果だ。同件に関する記事を読みながら、『テレビに子守りをさせないで』という題の本を思い出した。
この本や同様の内容の講演は、受け答えをするコミュニケーションと、ただ受動的に受け取るそれとでは、子供の成長にはかなり異なる影響がもたらされるとし、読み聞かせの必要や親子の会話の大切さを教えている。
子供をテレビの前に座らせておくと静かになるし、言語刺激も受けられると考える親がいるが、テレビからの言語刺激は一方通行のため、子供は受身になり易く、家庭内の会話も減りがちだ。また、自分からは話す必要がないため、語彙は増えても発話が遅れるなどの悪影響も出る。
現在も、テレビや携帯電話を持たせ、CDを聴かせておけば静かになるし、言葉や歌も覚えると思う人がいる事は、同様の内容の講演会や番組が続いている事を示すサイト記事からも窺われる。
その意味で、遠隔授業の方はテレビやCDなどによる受動的な刺激に近い影響を与えるといえるようだ。
現場の教師はチャットワークなどのアプリで生徒とコミュニケーションをとり、質問も受け付けている。だが、それでも、対面授業ほど緊密なやり取りはできないし、教師やクラスメートなどとの会話などを通した自己表現の場も限られる。
子供への予防接種が待たれていたのも、仕事を持つ親が働きに出易くなる事以上に、少しでも安全な環境での対面授業再開と相互刺激による教育効果が期待されたからだ。
そういう意味で、対面授業再開に際してのコロナ対策遵守は当然だが、5~11歳児への接種開始は国家衛生監督庁によるワクチン使用承認から1カ月遅れた事で、未接種や接種効果が出る前に対面授業に戻り、学校で感染する例も出ている。
それなのに、対面授業に戻ったからという理由で、感染したりした子供のための遠隔授業用教材は準備していない学校が多い。
ワクチン接種は危険などの虚報の影響やワクチンの在庫切れなどで、子供向けの予防接種は期待されたペースで進んでいないが、一方通行による教育面での弊害は今回の報告でも明らかだ。教育現場や家庭内の会話を取り戻し、一日も早く一方通行の弊害を解消できるよう願わされる。
(み)