《ブラジル》農薬規制緩和法案を下院承認=農薬絡みの法規を大改定=「毒法案」との批判も相次ぐ中

環境運動家やFiocruzなどの諸団体が「毒法案」と批判する様子を報じる9日付G1サイトの記事の一部

 下院が9日に承認した農薬の管理や承認に関する農薬規制緩和法案(PL6299/02)は、「毒法案」とマスコミから呼ばれ、諸方面から批判を浴びていると9~14日付現地サイトが報じた。
 この法案は上院が作成したものだが、下院で大幅改定され、上院で再度、審議、承認する必要が生じた。
 下院が承認した法案の報告官は西森ルイス下議で、新農薬の効用や危険性などの分析、承認、監視の権限を農務省に集中させた。
 効用などの調査は最大30日間、新製品や新たな原材料に関する調査は最大2年間とし、期間内に終了しなかった場合は一時的な登録や一時的な使用も認めている。
 ただし、水源や水系に関連する場所や森林で使われる農薬は「環境管理製品」とし、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)や環境省が扱う。
 農家が使う農薬の登録や登録内容変更の際は、農務、環境、保健の3省と国家衛生監督庁(Anvisa)が意見書を出せるが、企業や調査機関との協議や罰則適用の権限は農務省にしかない。
 西森氏は「現行の農薬規制法は1989年に制定されて以降、30年間、殆んど見直しが行われてこなかった。現在、許認可待ちの新農薬は約1800件もある。うち95%は新成分を伴なわないものであるにも関らず、許認可には平均8年近くかかる」と19年3月13日付けニッケイ新聞で法案が提出された背景を説明していた。

 とはいえ、安全確認手続きは煩雑な上、人体への影響の確認は申請後となる事などの不安点が残るとされる。また、新たな農薬の登録や当初は予定されていなかった使い方の承認は通常7年前後かかるのに、最大2年では、十分な検証は難しいとも批判されている。
 改定法案では、人間や動物の健康、環境を損なうと思われる製品登録への異議申し立てや登録抹消要請が可能な機関のリストも削除された。現行法では、関連部門の専門家の団体や議会に代表を置く政党、消費者や環境、天然資源の保護団体に権限を認めている。
 また、既存農薬の再評価期間は90日以内としているが、ブラジルで使用量が最も多いグリホサートの再評価作業は08年から続いており、非現実的だ。
 奇形や突然変異、癌やホルモン障害、生殖器系への損傷を誘発し得る製品の登録を禁じた項目は、「受け入れがたいリスク」という言葉に置き換えられ、焦点がぼやけたとの批判が出ている。
 改定法案に異論を唱えているのは、野党議員や環境団体、保健衛生機関など、多岐にわたる。オズワルド・クルス財団(Fiocruz)は14日、「修復不能な損害を与え得る」との警告文を再審議前の上院に送った。

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