ボルソナロ大統領が選挙の票集計に対する不信発言を再開し、選挙高裁(TSE)と再度の舌戦を始めた。そこには軍を絡めたやりとりも存在する。16日付現地紙などが報じている。
ボルソナロ氏による票集計不信発言が再び始まったのは、12日にリオ州内陸部のトゥピ局のラジオ番組に出演した時だ。同氏は世論調査機関を批判後、票集計に改めて不信感を表明。「軍が何十もの質問を送ったが、TSEは返事をしない」と語っていた。
ボルソナロ氏は2018年の大統領選後から、「自分は一次投票で当選していたのに、不正があった」と主張し続けていた。昨年の8〜9月には従来の電子投票に対し、自身の提案する「印刷付電子投票」の実施を訴え、主張が激化。
昨年8月に下院で「印刷付電子投票」に関する法案が却下されると、支持者を煽り、最高裁やTSEを攻撃する9月7日の独立記念日のデモへの参加を呼びかけた。この時は、テメル前大統領の説得で主張を沈静化。ボルソナロ氏の支持母体となっている中道勢力「セントロン」からも、票集計不信発言はやめるように言われていた。
TSEのルイス・ロベルト・バローゾ長官とエジソン・ファキン次期長官、大統領選挙時に長官就任予定のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事の3人は15日、陸軍がTSEに対して行った「票の安全性」に関する質問に答えるビデオを流した。
これは、陸軍が送った48の質問に答えたものだ。質疑応答の内容は2巻全700ページの書類の第一部としてまとめられており、該当部分は14日に軍に送られた。書類は守秘事項だったが、書類の存在が漏れたこととその内容ゆえ、公開することになった。
バローゾ長官はこの後にフォーリャ紙の取材に応え、「サイバー攻撃で投票結果が操作されるリスクはない」と改めて断言。グローボニュースからの「ボルソナロ氏が大統領選で負けを認めずに反乱を起こしたら」との質問にも、「反乱の可能性の芽は全て摘まれている」と答えた。
だが、大統領のTSEへの不信表明はまだ続く。それは、エジソン・ファキン次期長官が16日にエスタード紙の取材に応じ、「TSEはもうサイバー攻撃を受けている可能性がある」と前置き後、「ブラジルがロシアなどからハッキングを受ける可能性はあるし、大統領が電子投票を信頼していないことは知っている。だが、大統領が選挙の結果を否定することはないと信じている」と語ったことに端を発する。
ボルソナロ氏はこの発言を受け、ロシアからネットをつないで出演したジョーヴェン・パン局のインタビューで「選挙が安全ではないと認めたようなものだ」と批判した。
一方、軍を代表してTSE事務局長に就任する予定だったフェルナンド・アゼヴェド・エ・シウヴァ前国防相が16日に突如、就任辞退を発表した。同氏は様々な検査を受けたばかりで、「健康上の理由」としているが、軍のTSEへの質問問題が浮上していた最中に起きた辞退だけに、注目されている。