在住者レポート=パラグアイは今=一人当たりセメント消費量がチリやアルゼンチンなみに=2月12日版=硯田一弘(すずりだ かずひろ)

大統領府、Palacio de Lopez。普段であれば上の写真の様な立派な外観で、パラグアイを代表する名建築なのですが、1867年=明治維新の前年に建てられた本体は老朽化が進んだために2020年11月から改修工事が始まり、現在は東半分が足場で覆われていて本来の美しい姿は見られません。

アスンシオン開催だったテニスジュニア世界大会

 今週(2月7日の週)はアスンシオン近郊のヨット&ゴルフクラブでテニスのジュニア世界大会が開催され、日本からも選手5人、コーチ4人がパラグアイ来られて連日熱戦を繰り広げました。
 この大会は毎年今の時期に開催されるもので、かつて錦織圭選手もジュニア時代に参加したという国際認知度も高いイベントです。
 戦績はともかく、この大会に参加した16歳の松岡隼君は、この大会の最中に世界ランキング99位になったとのこと、日本の若者の素晴らしさを目の当たりにできました。おめでとうございます! 
今回参加した選手の皆さんの昨年の記事(https://news.yahoo.co.jp/articles/e71f95a837f7b0ea10fe0a0469d1a0b0f0026795
 男子4選手は残念ながら火曜日までに敗退し、ブラジルのポルトアレグレに転戦、唯一勝ち残った女子選手、豪州オープンから転戦して来た虫賀愛央選手は台湾選手とのダブルスで生き残りを賭けて頑張りましたが決勝には進めず、木曜日はアスンシオン市内観光をされることになりました。
 そこでおススメした行き先の一つがパラグアイ大統領府、Palacio de Lopezでした。
 しかも昨年末にアスンシオンを襲った暴風雨によって覆いの一部が崩れて悲惨な状態になってしまいました(https://www.lanacion.com.py/pais/2021/12/30/palacio-de-lopez-no-hay-riesgo-de-colapso/
 年が明けて工事は再開されています。この歴史的建造物の改修工事にかかる工期は30カ月(=2年半)、予算はGs.38.885.225.810(約565万ドル≒6億6千万円)、当初MOPC(建設省)が見込んだ予算より2割も安く出来るのだそうです。(https://www.ip.gov.py/ip/mopc-adjudico-restauracion-del-palacio-de-lopez-con-ahorro-del-20-respecto-al-precio-referencial/
 築150年を超える老建築に改修の手を加えて更に長持ちさせようという意識の高さは、近年何でもスクラップにした日本でも見習ってほしい部分。法隆寺や東大寺大仏殿といった古い建物が残っている一方で、耐震性の見直しとの名目で、昭和の建物がどんどん壊されていったのは残念なことです。
 13日のNHKはオリンピック中継が出来ない海外向けに、解体現場で活躍する重機の番組を流していました(https://news.mynavi.jp/article/20211013-2136370/)。

建築分野での日本企業の進出も期待

経済に大きなインパクトを与えるコンクリート工場建設を報じるラ・ナシオン紙1月30日付記事

 パラグアイ大統領府の改修工事には、通常1㎥2400㎏のコンクリート素材を、1700㎏の軽量コンクリートで賄われたとのこと、数々の最新工法で化粧直し工事が進められています(https://www.ultimahora.com/misteriosa-fisura-revela-la-fuerza-del-ataque-brasileno-al-palacio-lopez-n2976981.html
 コンクリートの原料となるセメントはパラグアイ国内でも約100万トンが生産されているものの、建設ラッシュが続く現状では需要に供給が追い付かないで輸入品を増やしても品薄の状態が続いていましたが、カルテス前大統領の企業グループが推進するセメント会社CECONの工場が建設されており、これが今年半ばに完成すると一挙に100万トンの供給が追加されて、国民一人当たりのセメント消費量もチリやアルゼンチンに比肩するレベルになることが予想されています(https://www.lanacion.com.py/negocios_edicion_impresa/2022/01/30/un-gran-impacto-economico-tendran-5-nuevas-industrias/image.png
 コンクリートの消費量は経済活性のバロメーターでもありますが、森林資源にも恵まれたパラグアイは、今後木造建築の分野でも成長が見込まれます。また、高層構造物の建設はまだまだ続いていますので、建築分野での日本企業の進出も期待されます。

中南米における一人当たりのコンクリート消費量グラフ

 ところで、今日の言葉hormigón=コンクリートはセメント(石灰石を高温で焼成して粉末にした粉体)と砂や砂利といった骨材に水を加えて固める素材のことですが、スペイン語のオルミゴンやポルトガル語のベトンという言い方は慣れないと覚えにくい単語です。
 またセメントCementもスペイン語ではCementoで発音も同じですが、ポルトガル語になるとCimentoシメントとなるので御注意を。日本語的に似た語感のセメンチsementeというポルトガル語は種・精子のこと。ブラジル人も多いパラグアイで会話の中で出てくるとややこしいです。
 【訃報】日本では漸くコロナ感染のピークを越えた感じの報道がありますが、先週サンパウロで大変お世話になった駒形秀雄さんがコロナ感染により亡くなられました。旧ニッケイ新聞・現ブラジル日報での情報発信を続けられ、含蓄のある記事に大いに触発されてきました。ご冥福をお祈りします。


パラグアイの言葉 hormigón(オルミゴン)=コンクリート 英:concrete 葡:betão


 アディルザス代表。1982年に総合商社に入社、当初は日本国内・アジアやアフリカでの肥料の原料購入や製品販売の仕事に没頭。その後北米での業務研修を経て、1988年に初めての海外駐在先として南米ベネズエラで肥料原料やカカオの買付などに従事。一旦日本の国内販売に従事するも、2008年ベネズエラに二度目の赴任。2012年にペルー、14年にブラジル、16年にパラグアイ赴任。18年春からは南米ビジネス拡大を目指してサラリーマンを辞めてパラグアイでの残留を決意、AdirzUS(https://www.adirzus.com/)を起業した。

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