ロシアのウクライナ軍事侵攻により、連邦政府内からもボルソナロ大統領に対し、早急にロシア批判を行うことを望む声が出ている。ボルソナロ氏は先週、ウクライナ問題で国際的な緊張感が高まる中、ロシア訪問を強行して連帯を誓うなどして国際的に波紋を広げていた。24日付現地紙、サイトが報じている。
ロシア軍は24日、ウクライナに軍事侵攻を行った。対象となったのは親ロシア派が一方的に独立宣言を行ったドネツク、ルガンスクといった東部だけにとどまらず、中央部に位置する首都キエフ、さらに南部など、軍事施設のあるところで行われている。
今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ボルソナロ大統領のロシア訪問が再び問題視され始めている。大統領は米国から訪問を強く反対されていたにもかかわらず、15〜16日に強行した上、プーチン大統領との会談ではロシアへの連帯まで口にして、米国政府の強い反発を招いていた。
グローボ局報道によると、大統領府関係者や外務省、経済省はすでに、ロシア行きを「失敗」とみなしており、経済への打撃を強く恐れているという。
ただし、このロシア行きの件がなくとも、ロシアによる軍事侵攻とそれに対する制裁措置による国際的な経済打撃は深刻だと受け止められている。
現在はウクライナ危機により、ドル安が進み、23日は1ドルが5レアルで終了。24日も5レアル台を割り込む勢いで下がっている。その反面、原油価格の高騰でインフレが進むことが恐れられている。
23日の国際原油価格は1バレル100ドルを超えており、120ドルに届く勢いだ。そうなれば、石油だけでなく、石油を使った製品にも影響が及ぶ。この危機が長引けば、落ち着き始めていた伯国でのインフレのピークが引き延ばされる可能性が強まる。
そこに加えて、屈指の貿易相手国である米国との関係が悪化すれば、経済状況の悪化に拍車をかけかねない。ブラジルと米国の関係は、トランプ前大統領への忠誠心からボルソナロ大統領によるバイデン氏の大統領承認がG20諸国の中で最も遅くなって以来、雲行きが怪しくなっていた。それが悪化する可能性が出てきている。
また外務省では、これまでの中立外交の伝統を破り、「ロシアに反対の立場をとるべき 」との意見も出始めているという。これまでブラジルは、ボルソナロ氏自身も所属していた軍の方針で「他国の紛争には関与しない」という立場を取り続けている。
外務省の具体的な対策としては、国連安全保障理事会が行うロシアへの制裁処分に署名することだという。だが、2月はロシアが同理事会の議長国を務めるため、これは難しいとの見方もある。
外務省はボルソナロ氏のロシア訪問を「2国間の問題に過ぎない」と肯定していたが、内部では反対も根強かった。熱心なボルソナロ派として知られたエルネスト・アラウージョ前外相までもが、15日にボルソナロ氏のロシア行きを強く批判していた。
国内外の圧力が高まる中、ボルソナロ氏のウクライナ危機への見解発言が注目されている。
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24日は全世界がロシアによるウクライナへの軍事侵攻の話題で溢れた1日だった。ブラジルでは特に、ボルソナロ大統領の次の出方が注目されている。ボルソナロ氏が敬愛してやまない米国のトランプ前大統領は、プーチン大統領のウクライナ東部の独立承認を「天才だ」と称賛。その一方で、ボルソナロ氏が忌み嫌うベネズエラのマドゥーロ大統領も「プーチン氏を全面支持する」との声明を出している。他方、大統領選最大のライバルとなるルーラ元大統領は、ロシアの軍事侵攻をすぐさま「嘆かわしい」と批判した。ボルソナロ氏のとる態度やいかに。
★2022年2月22日《ブラジル記者コラム》なぜボルソナロはロシア訪問したのか=選挙時のサイバー攻撃依頼説が浮上⁈
★2022年2月17日《ブラジル》ボルソナロがプーチンと相互協力誓う=ウクライナ問題やや緩和の中=反共、反コロナの姿勢緩める
★2022年2月15日《ブラジル》ボルソナロが開戦危機無視、ロシア訪問強行=肥料等確保の交渉が主目的か?=緊迫感高まるウクライナ情勢