サンパウロ州を中心にアグロフォレストリー(森林農法、AF)の普及活動を行う日本の非営利団体「VERSTA(ベルスタ)」が2日、サンパウロ州環境局環境研究所(IPA)と共に「ジュサラ椰子AFプロジェクト&啓発合同セミナー」をセッチバラス市立老人ホームにて開催した。8日、ベルスタの小野瀬由一(おのせ・よしかず)専務理事と山添源二名誉顧問がサンパウロ市の本紙編集部を訪れ、同セミナーの様子や近年の活動について語った。
アグロフォレストリーは、Agriculture(農業)とForestry(森林)を掛け合わせて造られた言葉。農作物と共に樹木を植え、植物同士の相互作用を利用することで農薬や肥料を使わずに農業を行う。森林を伐採して農地開発をしないで済む利点もある。
ジュサラ椰子は、マッタ・アトランチカ(大西洋岸林)に自生する植物で、若芽(パルミット)や果皮が食用に用いられる。パルミットの採取を目的とした乱盗伐が長年行われ、地域の植生維持、品種減少の観点から問題となっている。
ベルスタはジュサラ椰子を用いたAFの普及活動を通じて、国連が2015年に採択し、30年の達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向け活動を行っている。
昨年は三井物産環境基金とイオン環境財団から助成金支援を受け、伯国の環境団体と協同してジュサラ椰子のAFの実施、二次林(再生林)栽培の指導を行った。
サンパウロ州との合同セミナーでは会場に95人が来場、オンライン上で200人が視聴参加した。小野瀬専務理事は「昨年行ったセミナーの参加者は100人。オンライン化のおかげで多くの人にAFを伝えられるようになりました」と語る。
コロナ禍前には日本の大学生会員をブラジルに送り、現地でAFを体験してもらう研修事業を実施していた。コロナ禍によって研修事業を中断している現在は、研修事業費をジュサラ椰子の植林費用に置き換え、植林活動を実施。21年時点でベルスタが支援したジュサラ椰子の農地面積は46ヘクタール(東京ドーム10個分)になるという。
しかし、AFで育てたジュサラ椰子を商品として売り出すには一定数を安定供給する必要がある。生産量安定のために「サンパウロ州立公園にジュサラ椰子を植えてもらっている」という。
今後は、同農法の認知度向上、違法伐採防止のためのAF環境学習の実施、ジュサラ椰子の付加価値を高めるための化粧品や高齢者向け健康食品の開発を進めていく。
セミナーはサンパウロ州インフラ・観光局のユーチューブ上(https://www.youtube.com/watch?v=2NRBy1w9LS0)で今も公開されており、視聴可能。一部が日本語になっている。