《ブラジル》ウクライナ侵攻で農業界に暗雲=肥料高騰が主要農産物直撃か=鉄鋼業では追い風の一面も

延々と広がる大豆畑(Arquivo OP Rural/Divulgação)

 【既報関連】ロシア軍によるウクライナ侵攻でブラジルでも様々な影響が出始めていると2月24日~2日付現地紙、サイトが報じた。ブラジルでの主な問題は農業やアグロビジネス、燃料などで、現在は鉱業関連の話題も具体化し始めた。
 農業関連の問題は減産やインフレなど多岐にわたる。それは、ロシアとウクライナがブラジルの重要な肥料提供国である事や両国が小麦やトウモロコシの輸出国である事などが原因だ。ブラジルが使う肥料の原料の多くはロシアからの輸入品で、中にはロシアが実質的に唯一の供給国という原料もある。
 パラナ州イタンベーのクリスチアノ・ロニコニ氏は昨農期、肥料が200%値上がりしたため、作付面積を10%削減。今回の軍事侵攻で肥料が値上がりすれば作付面積を更に減らす意向だ。
 肥料製造会社や供給会社は既に農業関連の商品リストから肥料関係の価格表を外しており、農協関係者は値上がり必至と見ている。サンパウロ州南西部の穀物や種子生産者のリカルド・クーニャ氏も、軍事侵攻前から高騰していた窒素とカリウムが更に値上がりしたという。
 ブラジルの主要産物の大豆はリンとカリウム、トウモロコシは窒素に依存しているが、ロシアはブラジルにとって、これらの三大原料の最大提供国だ。

 大豆価格は干ばつなどで60キロあたり200レアルを超えていたが、軍事侵攻で肥料の値上がりやコスト高、減産が起きれば、大豆や加工品が値上がりする。大豆やトウモロコシは主要な飼料でもあり、肉や卵の値上がりも避けられない。
 更に、パラグアイが経済制裁の一環としてロシアへの肉の輸出を停止した事で、同国企業と提携しているブラジル企業もそれに加わるという形での貿易上の影響も出始めた。
 また、原油や天然ガスの主要輸出国のロシアへの経済制裁で原油や天然ガスなどの国際価格は急騰。ペトロブラスは当面、従来の価格政策を継承するが、燃料価格への影響も不可避だ。
 他方、ロシアとウクライナは世界的な鉄鋼製品と金属原料の生産・輸出国であるため、鉱業や鉄鋼チェーンに関連する鉄鋼や原材料の供給にも影響が出る。これは、鉄鉱石や銑鉄、半製品の供給でのブラジルのシェア拡大をもたらす可能性がある。
 シェア拡大はブラジルには望ましいが、ボルソナロ大統領はその事で先住民居住区での採掘拡大を正当化しようとしており、環境運動家らの間に懸念が広がっている。

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