ウクライナ侵攻がプーチン氏の失脚早める?

バイデン大統領が一般教書演説でロシアを批判と報じる1日付G1サイトの記事の一部
バイデン大統領が一般教書演説でロシアを批判と報じる1日付G1サイトの記事の一部

 ウクライナ侵攻を行ったロシアを取り巻く環境は厳しさを増す一方だ。1日夜、米国のバイデン大統領は、在米ウクライナ大使らを招いて開催した上下両院合同会議の一般教書演説で「独裁者の侵略に代償を」とロシアのプーチン大統領を非難。
 同日は、欧州議会もウクライナの欧州連合(EU)加盟審査を次のステップに進める事を認めたし、NATO軍も東欧への配属を補強。ウクライナにいたインド人学生の死亡が報じられると、中国も積極的擁護姿勢を変化させた。
 2日、ロシアとウクライナによる停戦協議が再開される予定だったが、ロシアによる市街地攻撃によって産科病院などが破壊され、ウクライナ市民の死者が増加。ロシアは一般市民を巻き込む砲撃を行わないとの約束をウクライナ側としており、約束の順守を求めるウクライナ側の反発から、協議の再開自体が危ぶまれた。その後、2日夜再開と決まった。
 ブラジル国内メディアは、「プーチン氏は20年間をかけて進めてきたEUやNATOの分離、弱体化への試みの成果を数日間で喪失」と報道。侵攻作戦が同氏の思惑通りに進んでいない事や、ロシア国内も含む世界的な批判にさらされ、プーチン氏自身やロシアの世界的な地位や安定性も揺らぎ始めている事を伝えている。
 プーチン氏は核抑止力への言及も行い始め、世界規模の経済制裁を受ける数少ない国家元首の一人になってしまった。友好国も反旗を翻し始める中、旧ソ連時代の影響力を保つ事は夢でしかない事を痛感しているはずだ。一度振り上げた拳を下ろす事は難しいが、世界はその器量が同氏にあるかを注視している。
 大方のブラジル国民はプーチン氏に対して厳しい評価を下している。その理由の中には、ボルソナロ大統領のロシアへの曖昧な姿勢に対する苛立ちも含まれている。
 ボルソナロ大統領の「交易上の理由からロシアとは中立を保つ」という姿勢は一見、正当にみえる。確かにブラジルはロシアからのみ輸入している肥料用原料があるなど、農業分野での依存度が高い。
 だが、交易上の理由以外にも原因があるのではとの憶測も囁かれている。それは、ボルソナロ大統領が2月にロシアを訪問した時のことだ。ボルソナロ大統領は閣僚よりも多い人数の、次男カルロス氏らのネット広報チーム、通称・憎悪部隊(gabinete do ódio)を引き連れてロシアを訪れた。ボルソナロ大統領は彼らの同行理由や行動日程の詳細を明らかにしていない。
 一部情報筋は、ボルソナロ大統領がこの時、10月の大統領選に向け、選挙システムへのサイバー攻撃方法の指南や協力をロシアに仰いでいた可能性があり、ボルソナロ大統領がロシアへ曖昧な態度をとるのも、非難した場合にロシアからこの件での報復措置を受けることを恐れているからと言う。
 今回のウクライナ侵攻では永世中立国のスイスさえロシア批判に回った。ボルソナロ大統領が反民主主義デモの扇動役であった事を考えれば、民主主義を前面に出して抗戦しているウクライナ支持は難しいか。コウモリが哺乳類と鳥類の双方におべっかを使い、つまはじきにされた寓話を思えば、ボルソナロ大統領の態度は賢明なものとは思えないが…。(み)

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