2日、ニューヨークで行われた国連総会の緊急特別会合でロシア非難決議の投票が行われ、141対5の圧倒的大差で採択が決まった。ボルソナロ大統領が「中立」を宣言しているブラジルも、外務省が主導して賛成票を入れた。2、3日付現地紙、サイトが報じている。
今回の会合では193カ国中、4分の3以上の141カ国が、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を非難し、即時撤退を求める決議に賛成票を投じた。
2014年にロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、「クリミア併合を認めない」との決議に賛成したのは100カ国、反対したのは11カ国だった。このことからも、国際社会におけるウクライナ問題でのロシアの立場は悪化したといえる。
ただし、今回の決議案は「最も強い言葉で非難する」が「最も強い言葉で遺憾の意を表明する」に変えられ、口調が弱まった。
決議に反対した5カ国はロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリアだった。これらはいずれも、長期の独裁政権が敷かれている国だ。
今回の決議では棄権した国が35カ国、投票を避けた国も12カ国あった。棄権した国にはインド、中国、南アフリカといったBRICS諸国や、キューバやニカラグアといった反米左派政権の国、イランやイラクなどだ。投票を行わなかった国にはロシアの全面支持を公言しているマドゥーロ大統領のベネズエラがある。
この状況下、ブラジルは賛成を選んだ。ブラジルはボルソナロ大統領が中立を宣言しており、今回の決議希望のために署名した96カ国には含まれていなかった。だが、ブラジル外務省は熱心に賛成の立場を求めており、ロナウド・コスタ・フィーリョ国連大使は安全保障理事会でもロシアの武装解除を強く求めていた。
決議文書では、ロシアの軍事侵攻の無効性やウクライナの主権と領土の正当性を支持。また、ロシア軍の即時撤退とベラルーシの軍事協力中止、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の「独立承認」の撤回も求めている。
国連総会には平和維持軍派遣や制裁適用の権限はなく、決議にも法的な拘束力はない。制裁や平和維持軍派遣は国連安全保障理事会参加の15カ国の間で決められるが、ロシアが常任理事国のために決議される見通しはない。ブラジルは今年1月1日に、2年任期の非常任理事国に就任している。
なお、ブラジル国連大使は軍事侵攻などには強く反対したが、ボルソナロ大統領の意向なども汲み、穏便な文言での決議を求めた。大統領はウクライナ危機の最中の2月16日にロシアを訪問し、肥料などの農業関係の交渉を行っており、ロシア孤立化でそれが壊れることを恐れている。
その一方で、テレーザ・クリスチーナ農相が12日にカナダに渡り、肥料の交渉を行う予定を立てるなど、ロシアとの関係が壊れた時のための対策を打ち始めている。
外務省は2日に、東欧諸国の大使館にウクライナ在住のブラジル人救出作業の強化を命令。2日には首都キエフのブラジル大使館をポーランドとの国境に近いリヴィウ市の新しい総領事館に移管するなどの動きも起こっている。
★2022年3月3日《ブラジル》帰国、それとも残留?=ウクライナ在住者の選択=神父「ここで務めを全うする」
★2022年3月3日《ブラジル》中立にこだわり孤立するボルソナロ=プーチン寄り発言目立つ=ウクライナ大統領を「コメディアン」扱い
★2022年2月25日《ブラジル》ウクライナ侵攻で大統領ロシア訪問が問題に=経済打撃、孤立化の恐れ?=外務省は批判発言望むも