2016年のジウマ大統領罷免時、「ネット世代の新しい政治参加のあり方」を示す存在として脚光を浴びた市民政治団体「ブラジル自由運動(MBL)」。当時からMBLメンバーの一般常識に欠けた言動は問題視されていたが、今になってもそれは治らず、相変わらず世間で物議をかもしている。
まずはリーダーのキム・カタギリ下議。ジウマ氏罷免運動の際、大学生だった彼は、若者特有の勢いある行動力が注目され、メディアからもてはやされた。そんな彼も今や、政治倫理感を問われる責任ある立場についている。
2月、カタギリ氏は音声配信メディア「ポッドキャスト」上で「ドイツがナチスの集会を法で禁じているのは過ちだ」と発言。ドイツのナチス再発防止対策は国際的にも高い評価を受けており、同氏のナチス問題に対する認識の低さに批判が集まった。このことで同氏は警察からもマークされ、議員罷免の声まであげられた。
さらにカタギリ氏は、破天荒なコメディアンとして有名なダニーロ・ジェンチーリ氏を大統領候補に擁立したがっているという。カタギリ氏は以前からジェンチーリ氏を推していて、現在話題のウクライナのゼレンスキー大統領がコメディアン出身ということで持論が正しいことを確信しているという。
確かにゼレンスキー氏とジェンチーリ氏には、『下品な芸風』という点で共通点は存在する。しかし、ゼレンスキー氏には、一流大学を卒業し、政治不信解決を真摯に訴えたテレビドラマの大統領役で人気を博し、選挙に際して結党間もない所属政党をいきなり与党にするほどの政治的手腕があった。
一方のジェンチーリ氏は、テレビで女性蔑視発言を行い度々問題となり、その上何の政治活動も行っていない。両氏を比較すること自体に無理がある…。
さらにMBL中心メンバーの一人、アルトゥール・ヴァルサンパウロ州議が戦時下のウクライナ視察を試み、渡欧する事態となっている。多くの在ウクライナブラジル人たちが戦火を逃れるために出国している最中であり、その非常識な行動に非難が集中している。
日本では「日本維新の会」創設者の橋下徹氏が「日本にいて戦争反対を叫んでも無駄。本当にその気があるならウクライナまで行け」と発言し、ウクライナ大使館から「軍事訓練の経験のない人が行っても意味はない」と反論され話題となっている。戦争地帯へ行くことの認識がヴァル聖州議ともども不足しているようだ。
こうしたMBLの失態の数々は「感情任せの言動」が原因となっている。ここに「保守ポピュリズムの限界」があるのかもしれない。(陽)