ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、米国は直ちに制裁を開始、先ずロシアのドル口座を凍結しました。
この措置によってパラグアイは大きな影響を受けそうです。
2019年のパラグアイの総輸出額は約78憶ドル=約9千億円、そのうちロシア向けの輸出額は6億ドル=約700億円で、総輸出額の8%を占める重要な輸出相手、即ち外貨の獲得相手です。
そのロシアが始めた戦争行為の結果、各国が制裁を開始するとパラグアイの外貨収入に大きな影響が出ることが懸念されます。
因みにパラグアイの輸出相手1位はブラジル32%、2位アルゼンチン22%、3位チリ8%でロシアは第4位。日本向け輸出は3200万ドル=僅か0・4%で、インド2・2%、韓国1・1%、台湾1%、ベトナム1%、タイ0・7%にも劣後しています。
パラグアイからロシアに輸出される品目の半分は牛肉、ロシアはパラグアイにとってチリに次ぐ重要な牛肉の輸出先となっています(https://www.lanacion.com.py/negocios/2022/02/25/sector-carnico-esta-en-offside-por-sistema-de-pagos-swift-suspendido-a-rusia/)。
そして二番目に大きな産品は大豆。大豆はロシアにとっても重要な食糧源ですが、ロシアが輸入する7億ドル分の大豆の半分がブラジル産、三分の一がパラグアイ産で、牛肉ではロシアにとっての総額の4割近くを占めるパラグアイが最大のサプライヤーなのです。
以前、アスンシオン港の視察に行った時、驚いたのはロシアに牛肉を輸出する冷凍コンテナの帰り荷として、袋に詰めた肥料用の尿素が輸入されていることでした。
これ、どういうことか? 説明します。
黒海沿岸で採掘され欧州各国にもパイプラインで輸出されている天然ガス、今回の制裁でも逆に欧州への供給が止まると懸念されています。
この天然ガスを加工すると、代替エネルギーとしても注目されているアンモニアが出来ます。
アンモニアは常態では気体ですが、通常は低温処理して液体として流通します。そのアンモニアを常温固体として扱いやすくしたものが尿素です。
尿素はアンモニアと二酸化炭素を反応させて固形化したものですが、我々肥料屋の常識では、数万トン規模の大型バラもの船で運びます。
ロシアはパラグアイから冷凍牛肉を輸入しても、冷凍コンテナで返す荷物が無いために、単価の安い尿素を袋詰めにして、パラグアイに送り返しているのです。高い運賃は往路の貨物である牛肉に転嫁・吸収され、帰り荷の運賃は極めて安く設定されている訳です。
パラグアイが輸入している化学肥料約2億ドルの1割がロシア産の尿素という図式ですから、農業の生産にも影響を及ぼすことが懸念されます。
姿をみせ始めた南米大陸横断道路
ところで、以前から何度もご紹介している南米大陸横断道路=Ruta Bioceanicaの部分開通式典が今週金曜日にルートの中心に近いLoma Plata市で40℃を超える猛暑の中執り行われました。
(https://www.lanacion.com.py/politica/2022/02/25/abdo-inaugura-primer-tramo-de-la-ruta-bioceanica/)
とは言え、横断道路はまだ完全開通した訳ではなく、ブラジル国境から今回式典のあったLoma Plataまでの半分区間が出来たにすぎません。このルートのアルゼンチン国境側へは道路はありますが、まだ殆ど未舗装。ブラジル側も橋が架かっていないので輸送ルートとしては未完成です。
ただ、それでも竣工式典をやってしまうのは「南米あるある」。
かつてベネズエラに住んでいた時、バルセロナという街に毎月通っていました。この街の空港、2009年に改修工事が完成した式典をチャベス大統領が大々的に執り行いました。ですが、実際には工事は式典で見える部分を終わっただけで大半は中途半端なまま、筆者がペルーに転勤する2012年まで放ったらかしでした。今はどうなっているのかな?
チャベス政権では、やりかけの工事現場で完成記念式典をやってマスコミに政策の成功をPRするのは常套手段でした。ですが、これはブラジルのルーラ→ジルマ政権でも同じで、同様に毎月の様に出向いていたクリチバの空港も2014年のサッカーワールドカップを目指して改修工事が行われていましたが、2016年にパラグアイに転勤になるまで未完成のままでした。
ロシアへの経済制裁で行き場を失う農産物を、新たなルートで新たな市場に売り込めれば良いですが、今回のロシア・ウクライナ問題は工事の完成を待たずとも、出来るだけ早く平和に収束して欲しいと願わずにはいられません。
それと、ブラジル・パラグアイ・アルゼンチン・チリを跨ぐ大陸横断道路も他国の中途半端なインフラ工事の様にならないよう、引き続き頑張って欲しいものです。
少なくともパラグアイでは、今日まで着実に進捗してますから。
パラグアイの言葉 cárnico(カルニコ)=食肉の 英:meat 葡:carne