ボルソナロ大統領がロシアのウクライナへの侵攻を止めることを求める発言をしながら、他方ではロシアのプーチン大統領を讃える発言を行うなど、矛盾した行動を続けていると、4日付現地サイトが報じている。
2日にニューヨークで開催された国連総会の緊急特別会合で、ブラジルは「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を非難し、即時撤退を求める」という決議に賛成した。
翌3日、ボルソナロ大統領はイギリスのボリス・ジョンソン首相と、ウクライナ危機に関する電話会談を行った。通話時間は15分ほどで、両者はロシアの暴挙を即刻止めるべきだとの結論に至ったという。
ジョンソン首相はその会話の中で、「罪のないウクライナの民間人の命が奪われ、街が破壊されている」と語り、ロシアに対する強い憤りを示した。同首相はさらに、「第2次世界大戦の頃、ブラジルは良き同盟国だった」と語り、「この危機的な状況で、ブラジルの声は再び重要な意味を持つ」とボルソナロ氏に呼びかけたという。
このように、ブラジルは表向きでは「ロシアの軍事侵攻反対」の形をとっているが、大統領本人の見解とはチグハグな状況となっている。大統領は「中立の立場をとる」と発言しているだけでなく、公式の場以外ではむしろ、ロシアやプーチン大統領に寄り添う発言が目立つためだ。
グローボ紙のジャーナリスト、ラウロ・ジャルジン氏の報道によると、ボルソナロ氏はワッツアップのグループに対し、「唯一の真実」なる投稿をフォローして拡散したという。それによると、現在の世界は欧米を中心とした「新世界秩序」に、ロシアと中国と中東諸国が反抗している状態で、ウクライナは新世界秩序に身を売った存在なのだという。ブラジルも、新世界秩序に対抗する包囲網に入っているが、最高裁の3人の判事とマスコミは新世界秩序側に戻そうとしている、と書かれているという。
このメッセージでは、常に中国を目の敵にしていたボルソナロ氏が中国をたたえたとして注目を集めている。
ボルソナロ大統領は3日に行われた木曜恒例のネット上のライブでも、プーチン大統領のことを「パルセイロ(仲間)」と呼んで、物議を醸している。
ボルソナロ氏によると、彼がアマゾンの森林破壊に関して、フランスのマクロン大統領を中心とする欧州諸国から強い批判を受けている中、彼の「アマゾンの主権」論に関して理解してくれた数少ない首脳がプーチン氏だったという。
このライブでボルソナロ氏は、ブラジルはロシアとウクライナの双方と交易関係を持っており、偏った立場を取ることはできないからウクライナ危機は「自分たちには解決できない問題」と発言。改めて中立を主張している。
ロシア軍がウクライナ東部のザポリージャ原子力発電所の攻撃を開始したとの報道が行われたのは、このライブのすぐ後のことだった。
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