ロライマ州初の日系市議会議員と州議会議員
江田マサミさん(43、ボアビスタ出身)は、江田テツさん(72、連載第9回参照)の甥であり、江田シロミルANIR(ロライマ日伯協会)代表(43、ボアビスタ出身)のいとこでもある。
マサミさんの特筆すべき経歴は、ロライマ州で初となる日系人市議会議員と州議会議員になったことだ。2004年、08年、12年の選挙でボアビスタ市議会議員、14年の選挙でロライマ州議会議員に選出された。
マサミさんの父、故マサルさん(福島、享年58)は、1955年にブラジル丸で移民した祖父クラノスケさんと祖母スイさんの長男で、シロミルさんの父、故・広さんとテツさん、妹ヤスコさんとともにボアビスタに到着し、同地でその生涯の大半を過ごした。
「兄は仕事もよくやる人だったけど、飲むのも好きで肝臓を壊してね」と、振り返るテツさん。テツさん自身はその正反対で酒もタバコもまったくやらない。
マサミさんが政治家の片りんをのぞかせ始めたのは初等学校の頃からだ。常に学校の友人たちの支持を得て、学生自治会の会長や副会長を務めていた。2002年には生活困窮者支援のための社会活動を開始し、04年に初めてボアビスタ市議会議員に立候補した。462人の候補者が13議席を争う中、1643の有効票を獲得し、11位で補欠当選した。その後、2007年に正式に一期目の市議会議員に就任した。
「教育があり、勤勉、正直といった評価の高い日系人であることも、人々からの信用を得ることにつながりました」
選挙時のマサミさんのキャッチフレーズは、「大きな目がない唯一の候補者(Masamy Eda é único candidato que não tem o olho grande)」で、人々にインパクトを与えた。「健康」「社会」「若者」をテーマに、生活の質の向上を公約に掲げた。
08年には再び市議会議員選挙に立候補し、2283の有効票を獲得し、14議席中5位で再選、ボアビスタの最年少市会議員となった。12年には3期目の当選を目指し、2581の有効票を獲得し、21議席中5位で再々選を果たした。
家族譲りの真面目な働きぶりとロライマ州の発展にかける情熱と冷静なビジョンは、多くの人々の心を動かした。14年にはロライマ州議会議員にブラジル民主運動党(MDB)より立候補し、同州全体で7番目の有効票を獲得し、15年からは4年間、州議員を務めた。
ロライマ州の農牧ルネサンス
マサミさんは現在、不動産業と新車および中古車の販売、輸出入業に携わっている。今年の選挙では、ブラジル連邦議員に立候補する予定で、困窮者の支援にとどまらず、ロライマ州の農業発展など、国家の成長のための公共政策を打ち立てる。
「ロライマ州は農業と牧畜で『ルネサンス』を迎えています。土地は豊かで、ピュアで美しい。将来が有望な州です。不平等な世界にあって、真に成長することを夢見る人々に好機を提供するのが私の目的です」と展望を語る。
また、日本の進出企業への印象として「ロライマ州の日系社会とのつながりが弱いと思います。ANIR関係者を通じてロライマ州の日系社会にもっと目を向けてもらえれば、同地に根付いて尊敬される日系人に支えられ、ビジネスにも相乗効果が得られます」と述べた。
「日本は小さな国土でありながら、経済や教育が非常に安定しているなど魅力の多い国。難点は伯国と地理的距離が遠いこと。もっと身近になれるように、エレベーター付きトンネルで両国を結べたら良いですね」と笑顔で語った。(取材・執筆/大浦智子、つづく)