【既報関連】ペトロブラスが10日に発表した、ガソリン約19%、ディーゼル油約25%、プロパンガス16%の値上げは、市場や政界に強い波紋を投げ掛けた。インフレ懸念はさらに強まり、政界は同公社の価格政策変更も含めた価格抑制策策定に向けて動き始めている。10、1日付現地紙、サイトが報じている。
燃料価格は昨年の年間インフレ率が10%を超えた最大要因のひとつで、ウクライナ危機後、連邦政府や市場などが価格高騰を避けるための方策を模索していた矢先の大幅値上げだった。
ジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)によると、ペトロブラスによる値上げはインフレ指数を1・5%ポイント押し上げるという。同研究所は今回の値上げが3月に1・05%ポイント、4月にも0・47%ポイントのインフレ圧力になると見ている。
燃料と共に食料も値上げ圧力となるとIbreは見ている。ウクライナ危機以後、ドル安は進んでいるものの、ロシアが主要輸出国である肥料の価格が30%超上がるとみられていることから、その影響がブラジルの農産物にも及ぶ可能性が強いという。
さらに、現行の経済基本金利(Selic)10・75%は、次回の調整で12%以上となることがすでに確実視されている。ウクライナ危機後は米国や欧州でも利上げが起こることが予想されていることもあり、「4月頃がピークで以後、徐々に下がっていく」との予想が外れ、さらに上がって高止まりする恐れも出てきている。そうなると消費不振への懸念も高まる。
今回の値上げはボルソナロ大統領の不満を高めた。大統領は7日に連邦政府によるペトロブラスの価格政策への介入をほのめかす発言を行い、直後にペトロブラスの株価を7%下げる原因を作った。
10日の恒例ライブでも、「現在ほど、石油にまつわる間違った政治戦略でブラジルが苦しめられている時はない。私が防波堤になって止めて欲しいと思う人もいるだろう。できるならそうしたいが、それが許されない。事態は悪くなる一方だ」との表現でペトロブラスを批判した。
一方、パウロ・ゲデス経済相は10日も、「燃料価格はペトロブラスに決定権がある」として同公社の価格政策に干渉しない姿勢を示し、「戦争が長引けば助成金について検討する可能性がある」と語るにとどまった。
他方、上院は同日、国際原油価格に左右されない燃料価格設定に向けた法案を承認。この法案には、価格抑制のための基金開設や、車を日常的に使う人がいる低所得家庭を対象とする月300レアルまでの支援金支給案が盛り込まれている。
ルーラ元大統領(労働者党・PT)は、「今一度、ペトロブラスの役目について考える必要がある」とし、10月の大統領選に当選した暁には「燃料価格政策のあり方を具体的に考える必要がある」と語った。上院が承認した燃料価格抑制法案の報告官はPTのジャン・パウル・ピラテス上議が務めた。
ルーラ氏は「400もの石油輸出業者に便宜を図るために国内の製油所への投資を止めている」と語り、ペトロブラスの現在の運営方針を批判している。
★2022年3月11日《ブラジル》ペトロブラスが11日から燃料代大幅値上げ=ガソリン19%、ディーゼル油25%
★2022年2月4日《ブラジル》基本金利が4年半ぶり2桁台10・75%に=3回連続で1・5%P上昇=インフレは2年連続で高進か
★2021年12月25日 《ブラジル》年間インフレは10・42%=6年ぶりの2桁台を記録