新型コロナ感染症では様々な後遺症が残りうるといわれているが、サンパウロ州立カンピーナス総合大学(Unicamp)のクリニカス病院が軽症患者の磁気共鳴画像(MRI)検査の結果を解析した結果、軽症患者でも脳に障害が残る事が分かったと14日付G1サイトなどが報じた。
新型コロナ感染症の後遺症に関する研究はまだまだその途上だが、Unicampによると、軽症患者が感染から2カ月後に行ったMRI検査81件から、軽症者でも脳の萎縮が起きていた事が確認されたという。
同校医学部脳神経科のクラリッサ・ヤスダ教授は、「入院していない軽症者のグループ、しかもこのような短期間で脳の萎縮が見られるとは予想していなかった」と語っている。
患者達は新型コロナウイルスが検出されなくても残る問題についても報告している。最も多いのは倦怠感や眠気、頭痛、不安症状、うつ病、認知機能障害で、記憶障害や注意力散漫(集中力の欠如)、精神的な柔軟性がなくなるという。そのほか、判断や分析などの速度低下、文の組み立てや言葉を捜すのが難しくなる症状、嗅覚や味覚の喪失などの影響が残る人もいる。
研究者達は新型コロナ感染症で死亡した人の脳も調べ、幹細胞で生成された物質を分析。各種のデータをクロスリファレンスした結果、脳やニューロン(神経細胞)をサポートする星状細胞で新型コロナウイルスが好む標的を見つける事ができたという。
星状細胞はニューロンの燃料ポンプとして機能する。ニューロンは眠っている時も常に機能する脳内で最も重要な細胞であるため、常に一定量の燃料の供給が必要だ。
研究では、新型コロナウイルスがニューロンの電源を直接妨害し、それらの機能を損なったり、細胞を殺したりする事が確認できた。新型コロナウイルスに感染した星状細胞と接触したニューロンが健康だった場合は、ニューロン自体が感染した場合より60%多く死亡していたという。
脳神経科ラボラトリーのコーディネーター、ダニエル・マルチンス・デ・ソウザ氏によると、新型コロナウイルスに感染した星状細胞がニューロンにとって有害な環境を作り出し、ニューロンの死を招く可能性があるという。
ソウザ氏によると、新型コロナ感染症患者はウイルスが体内にいる期間よりもずっと長く神経学的な症状を抱えているため、脳内のウイルスのダイナミクスを理解する事は、後遺症の予防や新型コロナ感染症のような病気に起因する神経学的症状を持つ人々の治療にも役立つという。
この研究はサンパウロ総合大学(USP)の研究者も含む80人の専門家が参加して行われたもので、国際的な科学雑誌でも公表され、国内外の研究者が参照する事ができるようになっている。
また、3月のはじめにはオックスフォード大学も、新型コロナ感染症が軽症であっても脳の萎縮が起こる事を示す研究結果を科学雑誌に公表している。