世界的医学雑誌の『ランセット』が、18年大統領選でボルソナロ氏の得票率が高かった市は新型コロナ感染症による死亡率も高いという記事を載せたと15~16日付ブラジル国内サイトが報じた。
14日付同誌が掲載したのは「ブラジルにおける新型コロナ感染症の空間的かつ時間的ダイナミクスにおける政治的、社会経済的要因の関与」という論文で、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)とブラジリア大学、リオ連邦大学(UFRJ)の研究者達が5570市のデータから、18年選挙でのボルソナロ氏支持率と21年の新型コロナの死亡率に相関関係がある事を示している。
大統領がマスク着用やワクチン接種の効果を否定し、薬効が証明されていない早期治療キットを推奨した事、デモやモトシアッタで人ごみを作らせていた事は周知の事実だ。
医療レベルなどが似ている市の死亡率の比較では、18年選挙でのボルソナロ氏支持率が高かった南部や南東部の市の死亡率は、支持率が低かった北東部の市のそれを上回っている事などが明らかになった。
一例は、セアラ州クラト市とリオ・グランデ・ド・スル州サピランガ市だ。どちらも大規模かつ人間開発指数(HDI)が中程度の市だが、人口10万人あたりの死者数(死亡率)は、前者が110人、後者は360人だった。
中程度の規模でHDIが高い市同士での比較でも、ボルソナロ氏支持率が高いと死亡率が倍増という結果が出ている。
HDIや医療サービスも良好、20年の死亡率は全国平均以下だったサンタカタリーナ州シャペコー市は、ボルソナロ派のジョアン・ロドリゲス氏(社会民主党)の市長就任で様相が急変。早期治療キット推奨やロックダウン反対、商店を開けさせ、患者は自宅で治療させるという方針転換の結果、21年5月の死亡率は全国平均より75%も高くなった。
研究では、連邦政府が全国規模の方針を立てなかったために市がコロナ禍に関する情報提供源となった事や、小中規模の市では政界や業界のリーダーの言葉の重みが増す事などが判明。小さな市では地元の政治家が情報伝達を独占し、企業家の言葉の影響力が増す上、科学的な裏づけが疎かになって虚報が流布し、科学的な論に疑問を持たせるようになるという。
各々の市が感染拡大抑制努力を怠ると、HDIの高さや地域医療のレベルといった要因が生む効果も帳消しになる事も明らかになったという。
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