《ブラジル》保健相=エンデミック宣言を画策=WHOでなく国が出すの?=大統領の意を酌む先走りか

保健相が上院にエンデミックへの移行を求めたと報じる15日付アジェンシア・ブラジルの記事の一部

 欧州やアジアで新型コロナの感染が再拡大する中、ボルソナロ大統領が16日、「今月中に保健省がエンデミックに入ったとの省令を出す」と発言した。ケイロガ保健相は上下両院議長や最高裁長官に現状説明を行ったりしているが、世界保健機関(WHO)が行うべき判断を一国が単独で行う事などへの疑問噴出と15~18日付現地サイトが報じた。
 新型コロナは世界的流行の「パンデミック」との宣言は、20年3月にWHOが行った。一方の「エンデミック」は感染が一部の地域や季節に急激かつ予想外に拡大する場合で、感染拡大抑制対策より感染症と共存しうる対策が求められる。
 新型コロナが異なる段階に入るとの考えは、11日のダニエル・ソランツ・リオ市保健局長の「新型コロナ感染症は長期間続く共存しうる病気となった」「新変異株さえ出て来なければコロナ前の生活に近い状態に戻るのは間近」との発言にも表れている。
 確かに、17日の感染者の7日間平均は3万9677人に、死者の平均も334人に落ちた。また、観察中の感染者も全体の2・5%の74万4568人に減った。

 ただ、パンデミック宣言を行ったのがWHOであったように、エンデミックへの移行も本来は国や地域では判断できないと言われる。WHOは、欧州やアジアでの感染再拡大やデルタクロン株確認などを受け、「パンデミック終結が近いと考えるのは間違い」とも述べている。
 そんな中でエンデミックへの移行を告げる省令発行との発言は、パンデミックに伴う防疫対策を嫌うボルソナロ大統領の意向を酌んだものだと報じられている。パンデミックでなければ、マスク着用や社会的な距離確保といった基準は不要となるからだ。
 だが、国内外で新たな変異株確認が続く上、パンデミックに伴う緊急措置が無効化されると、緊急使用承認のみのワクチン使用や歳出上限枠以外の支出承認などの特別措置の有効性保持対策や代替策も必要となる。
 ケイロガ保健相が16~17日に総弁護庁長官と共に両院議長や最高裁長官と会い、現状説明などを行ったのは、選挙出馬で辞任する前に省令を出すための準備といえる。だが、エンデミック宣言を行った国は皆無だし、予防接種継続の必要性は明らかで、一度に全てを変えるのは無理だとの声が上がっている。
エンデミックだとパンデミックよりコントロールが難しい部分もあると言う専門家もおり、今後の動きが注目される。

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