《ブラジル》ボルソナロがペトロブラス総裁解任=燃料代高騰に耐えられず=後任は値下げ擁護派指名

シウヴァ・エ・ルナ氏(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領は28日、ペトロブラス(PB)のジョアキン・シウヴァ・エ・ルナ総裁の更迭を決めた。大統領は以前から、ペトロブラスによる燃料代の高騰に強い不満を示していた。後任にはアドリアノ・ピーレス氏が確実視されている。28、29日付現地紙、サイトが報じている。
 シウヴァ・エ・ルナ氏はパラグアイとのイタイプー双国公社総裁だった昨年4月、ボルソナロ大統領の指名を受け、ロベルト・カステロ・ブランコ氏に代わるPB総裁となった。大統領がルナ氏を総裁に選んだのは、同氏が陸軍大将で、パウロ・ゲデス経済相に近い筋の人物でもあったためといわれる。
 だが、昨年からは燃料代の高騰が続き、2021年の年間インフレが10%を超える最大要因となった。そこにウクライナ危機が加わり、3月には燃料代がさらに高騰。ガソリンが約19%、ディーゼル油は約25%、台所用プロパンガス(LPG)も約16%の値上げとなった。
 ボルソナロ氏は燃料代高騰に強い不満を漏らし続けており、3月の値上げ直前には干渉までほのめかし、市場の強い反発を招いた。
 大統領としては選挙の年こそ国民に人気のある減税政策を行いたいところなのに、事態はそれに逆行。周囲の圧力などもあって、解任に踏み切ることになった。大統領には、燃料価格が上昇を続けている一方、PBが昨年1060億レアルという記録的な収益を上げたことも不満だった。
 昨年のカステロ・ブランコ氏解任の時も「燃料の高騰」が原因だった。現在のペトロブラスの価格政策は、国際価格に連動する変動制(PPI)だ。これは国際市場の価格変動に沿って価格を決める方法で、2016年のテメル政権の頃から採用されている。

 この制度は、ブレント石油の価格変動や為替の動向の影響を強く受ける。燃料価格はここ数年、コロナ禍などで高騰傾向が続いている。これは連邦議会でも問題となり、3月には燃料にかかる州税の商品流通サービス税(ICMS)を一定期間固定させる法案を承認するなど、PPIの影響を食い止める対策も行われていた。
 ルナ氏の後任候補はすでに固まっており、連邦政府は28日の内に、後任総裁はアドリアノ・ピーレス氏と発表した。ピーレス氏の就任の可否は、4月13日に開かれるPBの株主総会で決まる。
 ピーレス氏はエネルギー部門で40年以上の経験の持ち主で、ブラジル・インフラ・センター(CBIE)の共同経営者でもある。ボルソナロ大統領はベト・アルブケルケ鉱山動力相の推薦で同氏を後任に決めている。
 とはいえ、同氏にはPBの価格政策を変える権限はない。彼はこれまでも燃料代高騰を抑制するための基金創設の必要性を説いているが、基金創設を実現するには連邦議会で立法する必要があり、選挙の年だけに議案を通すのは至難の業だ。その意味で、いま総裁を変えても、PBの価格政策には当面変更はないと市場は見ている。だが、この指名はゲデス経済相を無視したもので、連邦政府内部での反発も予想されている。
 この28日は、福音派ロビイストのスキャンダルでミウトン・リベイロ教育相も辞表を提出するなど、ボルソナロ政権にとって波乱の1日となった。

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