ペトロブラス次期総裁としてボルソナロ大統領が指名していたアドリアーノ・ピーレス氏が、4日に総裁就任を辞退した。これでペトロブラスの燃料価格問題はさらに混迷を深めることとなった。4、5日付伯字紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領は3月28日、燃料価格高騰が止まらないことを理由に、ペトロブラス総裁だったジョアキン・シウヴァ・エ・ルナ氏を解雇した。大統領はかねてから、ブレント原油の国際価格や為替の変動に合わせる同社の価格政策を嫌っていたが、ウクライナ危機による原油価格高騰後の3月に起きた、ガソリン約16%、ディーゼル油約25%、LPG約16%という記録的な値上げが解雇を決定付けた。
大統領はベント・アルブケルケ鉱山動力相の推薦を受け、エネルギー関連のコンサルタント会社ブラジル・インフラ・センター(CBIE)創設者の一人のアドリアーノ・ピーレス氏を次期総裁に指名。同氏はペトロブラスの燃料価格高騰を公に批判しており、値下げへの動きも期待できたためだ。
ピーレス氏は13日に開かれる予定のペトロブラスの株主総会で承認、就任となる見込みだったが、4日にアルブケルケ鉱山動力相に書面を送り、総裁就任を辞退した。
ピーレス氏はその書面の中で、「燃料価格を下げるために引き続き戦ってほしい」とのメッセージを送りながらも、「自分が今抱えているCBIEの仕事と折り合いをつけることは困難である」として、就任を断った。
ピーレス氏のペトロブラス総裁就任は、指名当初から問題視する向きがあった。それは、同氏がCBIEという、同じ燃料部門を扱う民間企業を20年以上経営していることが、公社であるペトロブラス総裁就任の足かせとなっていたからだ。
国立会計検査院(TCU)は先週、ピーレス氏がペトロブラスとCBIEという民間企業と公社総裁に同時になることで利益相反する可能性がないかの調査開始要請を行っていた。連邦検察庁も同様の理由でピーレス氏の総裁就任に難色を示していたといわれている。
ヴェージャ誌の報道では、ブラジル都市ガス配給業者協会が行ったピーレス氏のロビー運動が裏目に出て嫌われたことも、総裁辞退の理由としてあげられている。
ピーレス氏の辞退により、ボルソナロ氏は新たな総裁候補を探す必要が出てきた。大統領は次の候補に関し、パウロ・ゲデス経済相と相談。ピーレス氏の指名はゲデス氏の意向を無視して行われており、その点でも問題視されていた。
5日午前中の報道によれば、ゲデス氏の右腕的存在のカイオ・パエス・デ・アンドラーデ氏が有力視されているが、エネルギー関連業界での経験がなく、別の人物が選ばれる可能性も残っている。経済省での同氏は、伯国産業界で長年問題視されている租税などの手続きを簡略化する部門の局長を務めている。
なお、ペトロブラス経営審議会議長に推挙されたランドルフォ・ランディン氏も、ピーリス氏に先立って指名を辞退している。