《ブラジル》バローゾ最高裁判事「選挙制度疑うよう軍に指南」名を出さずに大統領を批判=「子供じゃない」と軍反発

バローゾ判事(Roberto Jayme/TSE)

 最高裁のルイス・ロベルト・バローゾ判事が「陸軍は選挙システムを攻撃するよう仕向けられている」と発言し、軍関係者を激怒させている。24〜26日付現地紙、サイトが報じている。
 この発言は24日、バローゾ判事がドイツの大学で行われたイベント「ブラジル・サミット・ヨーロッパ2022」で行ったものだ。バローゾ判事はこの席で、ボルソナロ大統領と揉めに揉めた、昨年の「印刷つき電子投票(ヴォト・インプレッソ)」導入問題などに触れ、伯国での民主主義とフェイクニュース(虚報)について語った。
 バローゾ判事は当時の選挙高裁長官で、大統領からの攻撃に対して、「今日の電子投票が導入された1996年以降、不正は一度も起きていない。それなのに突然、不正があったと主張し、軍を使って選挙システムを攻撃させ、疑うように仕向けている」と語った。
 同判事は軍に関しては「民政復帰以降、優秀で問題もない」と称賛しながらも、「不正が行われていないことを確認するために選挙プロセスに同伴し、虚報からシステムを守るよう呼ばれたのに、(幾多の質問を投げかけたりして)選挙システムを攻撃し、そのプロセスに不信感を抱かせるように働きかけるのか」「軍は選挙に不信感を持つよう仕向けられていた」と語った。
 同判事は昨年8月のヴォト・インプレッソに関する下院での投票日に陸軍がブラジリアの三権広場付近で戦車の行進を行ったことにも触れ、「あれこそ威嚇行為の証拠だ。選挙過程に対する根拠もない、不正な攻撃だ」と批判した。
 バローゾ判事の発言を知り、陸軍は強い不快感を示した。国防省は24日に発表した声明で、「誰かの訓示を受けて民主主義の原則に反する行為を行ったなどと、証拠もない発言をされたことについて、強い嫌悪感を抱いている」と記した。 
 軍の怒りはこの声明だけにとどまっていない。前陸軍司令官でもあるパウロ・セルジオ・ノゲイラ・デ・オリヴェイラ国防相は、「軍に対する重大な攻撃だ」と不満をあらわにした。また、軍人閣僚の実質上トップのルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府総務室長官も、ツイッターに「軍は選挙に透明性を持たせるべく努めている、民主主義の防衛者だ」と掲載し、バローゾ判事に反論した。アミルトン・モウロン副大統領も、「軍は子供ではない」と不快感を示した。一部報道によると、軍がバローゾ判事を召喚して事情説明を求めようとしているとも言われている。
 軍からはその後も、戦車の行進のことに関する説明などは行われていない。
 バローゾ判事の発言に対する最高裁内の意見は割れている。「皮肉を言っただけで、大げさに騒ぐものではない」とする声がある一方で、「軍と最高裁の関係に火に油を注ぐような行為だ」と批判的な意見もある。
 ボルソナロ大統領は先週、バローゾ判事に関して、選挙の過程に軍を取り込んでくれたことに関して感謝の意を示していた。

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