最高裁判事の更迭や軍政令第5条(AI5)復活を扇動し、8年9カ月の実刑判決を受けたダニエル・シルヴェイラ下議に対し、ボルソナロ大統領が恩赦を出し、議論を呼んでいる。
大統領や支持者の主張の中で腑に落ちない事がある。それは、シルヴェイラ下議への恩赦が「表現の自由」を保護する事に繋がるとしている点だ。
表現の自由や言論の自由は、「知る権利」と共に民主主義の根幹をなすもので、これらを欠いたら民主政治は成り立たない。
シルヴェイラ氏が呼びかけた、軍政下での言論統制や反対派抑圧などに使われたAI5復活、民主主義を守るための三権分立の柱の一つの最高裁をないがしろにするような判事更迭は、民主主義への攻撃に他ならない。
民主主義に対する攻撃を行った事で受けた判決を不服として、民主主義の根幹である「表現の自由」の尊重を叫ぶのは本末転倒ではないのか。
18年の統一選前には言論統制とも言える行為が繰り返された。ボルソナロ氏を支持する警官が大学構内に入り込み、左派の学生達が用意したビラや旗の撤去などを命じたりしたし、教師達に政治的な発言を禁じ、授業の様子を映したビデオを送るよう求める人物も現れた。
今回の恩赦騒動は、「表現の自由」を盾に、民主主義を攻撃して断罪された仲間を開放しようとしているようにしか見えない。民主主義の根幹である「表現の自由」や「言論の自由」を、軍政擁護や民主主義攻撃を行った人に適用しようとする矛盾。
大統領と最高裁の確執が虚報関連捜査に影響する事を懸念する声も出ている。虚報拡散による「知る権利」侵害も民主主義への攻撃の一つだ。民主主義に敵対する行為が繰り返される中での選挙戦が、民主主義の大切さを確認する場となる事を願わずにはいられない。(み)