パウロ・ゲデス経済相が提案したラテンアメリカでの単一通貨創設に関して、ルーラ元大統領は4月30日、実現すればドルへの依存度を減らし、経済統合を促進できると述べた。3日付現地紙サイトなどが報じた。
だが、多くの専門家は次のような理由で懐疑的だ。各国の金融政策を統一すれば経済効率が上がり、市場が成長する可能性が高まるが、ブラジルとアルゼンチンの間のような経済不均衡を考慮すると、単一通貨の導入は非常に困難であるとする。
他方、ウクライナ侵攻後のロシアへの制裁によって仮想通貨が勢いを増し、市場がドルに依存しない代替手段を探し始めたように、金融システムが変化していることもアナリストは認め始めている。
先月はフォーリャ紙が、サンパウロ州知事選に出馬するフェルナンド・ハダジ元サンパウロ市市長(PT・労働党)と経済学者のガブリエル・ガリポロ氏(PTと協力関係にあるファトール銀行の元代表)が同様の見解を示す記事を掲載したが、採用は南米の国々にとどまる。
両者が提案した単一通貨は、地域の市場間の貿易と金融の流れに利用され、国内で採用できるか否かに関わらず、各国通貨間で変動相場制となる。通貨同盟創設の背後にある戦略は、「地域統合プロセスを加速し、南米の人々のための政治的および経済的で強力な調整手段を構成する」ことと述べている。
またゲデス氏は、ウクライナ戦争によって生じたエネルギー危機の後、欧州諸国がブラジルにより大きな関心を向けた事に注目し、単一通貨の創設とメルコスルとEUのFTA批准合意に向けた交渉再開を擁護した。
連邦政府とPT派はこの提案に賛同しているが、専門家はそれが選挙運動の議論の対象になるとは信じておらず、選挙での票獲得につながる保証は少ない。むしろインフレや失業など、国のより重要な課題が選挙の議題となると見ている。
ゲデス氏の提案は、19年6月にボルソナロ大統領がアルゼンチンを訪問した時、マウリシオ・マクリ大統領(当時)との会談で初公開された。当時、通貨の名前は「ペソ―レアル」とされ、両国でのみ採用されるものだった。
ゲデス経済相は昨年8月に上院外交委員会でこの件を再提起し、「我々は完全に統合することができ、EUで地域経済の一種の錨として機能するドイツのような役割をブラジルは担うだろう」と述べた。