サンパウロ市では3月以降、重症急性呼吸器症候群(SARS、ポ語SRAG)で入院する子供が増え、小児用の集中治療室(ICU、ポ語UTI)の86%、小児用一般病室も84%が同症候群の子供で埋まっていると4月27~5月1日付現地サイトが報じている。
呼吸器疾患の子供増加は秋以降なら普通だが、今年はコロナ禍で2年余り外に出ず、学校にも行けなかった事で、毎年繰り返されていた呼吸器疾患を引き起こすウイルスとの接触の機会が減っていた後の感染拡大という特徴がある。
市保健局は呼吸器疾患の子供増を見込み、病床数を増やしていたが、3月以降は病床使用率が高止まり。それでも、新型コロナのオミクロン株とインフルエンザの感染拡大が同時進行した1月よりは低率だという。
4月10~16日の19歳以下のSARS患者は12万4919人で、半数は5歳未満だった。幼児は抵抗力が弱くて重症化しやすく、翌週のSARSの入院者の79%は5歳未満だった。これらの数字は市内全ての病院の総計で、公立、私立などの別は問わない。
今年の特徴は、感染した細胞が合胞体と呼ばれる塊になるSRウイルス(VSR)だけでなく、比較的大人しいとされるライノウイルスやエンテロウイルス、メタニューモウイルスなどでも重症化している点だ。
専門家は、各種のウイルスが重症例を引き起こしている現状を、コロナ禍でマスク着用や手指の消毒が進んだ後に規制が緩み、各種ウイルスに触れてなかった人が一斉にウイルスに触れ始めた事で、予防接種がないウイルスによる重症患者が増えたとみている。
なおブラジルではまだ、欧米やシンガポールなど約20カ国で報告され、死亡例も出ている原因不明の子供の肝炎の報告例はないようだ。こちらも4月21日までの報告例169件中100件以上が2~5歳児、1割強が臓器移植も必要となるなど深刻だ。169例中74例からは風邪の原因ウイルスの一つで感染力も強いアデノウイルスが検出されている。
アデノウイルスは夏風邪の主な原因の一つで、ブラジルの子供のSARSとの関連性は確認されていないが、大人が同ウイルスに感染すると、重度のへんとう炎、肺炎、結膜炎その他の重病も引き起こし得るので要注意だ。
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