ブラジル中央銀行の通貨政策委員会(Copom)と米国の連邦準備制度理事会(FRB)がともに政策基本金利を引き上げた。両者が同時に発表される4日は「スーパー水曜日」と呼ばれ、注目を集めていたと2~4日付ブラジル国内紙、サイトが報じた。
米国の中央銀行にあたる連邦準備制度(FED)の決定機関であるFRBは7人の理事からなり、ニューヨーク地区の連邦銀行総裁とその他の地区の連銀総裁4人を加えた12人からなる連邦公開市場委員会(FOMC)は3~4日、リーマン・ショック後に取り入れた金融緩和を見直し、政策金利を0・5%ポイント(PP)引き上げる事を決めた。
米国の現行金利は0・25~0・5%だから、今回は過去22年間で最大の引き上げを行った事になる。これは同国の物価上昇率がFRBの目標上限の2%に近づいているためだ。
だが、金融緩和後の正常化という名の金融引き締めは、資産価格に影響を与える可能性があるだけでなく、経済活動の減速化も招き得る。
他方、ブラジルのCopomも3~4日の会議で、現行11・75%の経済基本金利(Selic)を12・75%へと1PP引き上げた。ブラジルも広範囲消費者物価指数(IPCA)が目標上限の5%を大幅に上回る約11%に達しているため、やむを得ない金利引き上げだが、こちらも経済活動の減速化が不可避といえる。
インフレ抑制を狙った政策金利の引き上げは、銀行からの融資などの返済金利の引き上げも招くため、返済額が増え、企業の業績悪化や株価下落も招きかねない。
そういう意味で、米国の利上げが米国企業の業績悪化を招けば、これらの企業と取引関係のある世界の企業にも影響するため、米国の利上げとそれに伴う株価下落は世界大の株安を招き得る。
また、米国の金利引き上げがドル買いを招けばドル高にもつながるし、低金利のために米国でだぶついた資金が流れ込んだ恩恵を受けていた新興国は、株式や債券が売れなくなり、景気が冷え込む可能性が増す。
ロシアによるウクライナ侵攻で起きたコモディティの国際価格高騰にドル高が重なれば、侵攻後に広がった世界的なインフレがさらに悪化する可能性もある。今回の金利引き上げはこういう動きも加速しかねない。
そういう意味で懸念されるのは米国での利上げが市場の予想を上回った場合で、利上げを見込んで起き始めているドル高レアル安がさらに進み、輸入品の国内価格の上昇を招けば、インフレのさらなる加熱も招き得る。そうすれば、ブラジルでのSelic引き上げは期待していたほどのインフレ抑制効果を挙げられない可能性さえ出てくる。
一例は2日付エスタード紙があげたFED Fund(フェデラル・ファンド金利=米国の政策金利)で、予想されている3・25%を上回る4・5%に引き上げられた場合、来年のIPCAは現在予想されている4・4%を超え、来年度の目標上限である4・75%以上の4・9%になる可能性があるという。
ブラジルの経済活動は既に減速化し始めており、米国の金利引き上げとSelicの引き上げが、インフレと経済活動の双方にどの程度の影響を与えるかや、どの国でどのような投資を行うべきかを慎重に見極めていく必要が生じている。