盗難被害の上塚周平像=心配する熊本関係者

左側は盗難された後の様子(昨年10月19日に撮影)。右側は以前の姿
左側は盗難された後の様子(昨年10月19日に撮影)。右側は以前の姿

 昨年10月に盗難被害に遭い、無くなったままの状態が続いているサンパウロ市リベルダーデ区のラルゴ・ダ・ポルボラ公園内の「移民の父」上塚周平像。ブラジル内をはじめ、日本の熊本県人からも心配する声が上がっているが、4月25日現在、今後に向けた具体的な動きは出ていない。
 ブラジル熊本県文化交流協会(清原健児会長)では、上塚周平像の行方について、サンパウロ市議などに秘書官を通じて問い合わせているが、何の情報も無い状態が続いているという。
 清原会長によると、熊本県人会員や有志など広く日系社会からの協力を呼びかけ、新たに上塚像を造ることも考慮している。しかし、同じような銅像を造った場合、再び盗難被害に遭う可能性も高く、石やコンクリート等で制作してはどうかとの意見もあるという。
 サンパウロ州プロミッソン市に住み、祖父の代から上塚氏と縁のある安永和教さん(75歳、3世)も上塚像の今後について「黙っていられない」と心配を募らせている。
 安永さんは「熊本県人会の式典出席のためにブラジルにも来たことがある熊本県の方からも、(上塚像盗難の)新聞記事を読んで心配の連絡を頂いている。サンパウロで具体的な動きが出たならば、自分たちもぜひ、協力したい」と話している。

平野運平像も過去に何度も盗難被害

 第1回笠戸丸移民の通訳を務めた故平野運平氏の銅像も過去に何度か盗難被害に遭っている。
 2019年頃に盗難被害にあった際には、同年6月、平野氏没後100周年を記念して、ブラジル静岡県人会と平野農村文化体育協会がサンパウロ市カンブシ区エスタード大通り沿いの広場に平野像を再建した。しかし、再建後半年も経たない同年11月に再び盗まれたことが判明し、関係者はショックの色を隠せない様子だった。
 関係者からは当時、「以前盗まれた平野像は銅製で、売られて溶かされたと思われる。その教訓から、今回は売ってもお金にならない石で像とプレートを作ったが盗難されてしまった。石像の盗難は金目当ての一般的な犯行でないのかも」と推測する声も上がっていた。

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