《ブラジル》ルーラ元大統領が米タイム誌で「ゼレンスキーにも責任」発言=「テレビに出るために周囲を戦争に巻き込まないで」とも

タイム誌の表紙(Reprodução/Twitter)

 ロシアによるウクライナ侵攻で欧米諸国がロシアへの制裁を強める中、ルーラ元大統領(労働者党・PT)が「ゼレンスキー大統領にもプーチンと同等の責任がある」と発言した上、米国なども批判し、物議を醸したと4~5日付現地紙、サイトが報じた。
 ルーラ氏の発言は4日付米『タイム』誌に掲載されたものだ。表紙には、ルーラ氏の写真と「ルーラ氏の第2の行動―ブラジルで最も大衆的な指導者が大統領の座への返り咲きを狙っている」との言葉があり、文中には「国を救う事を約束して帰還」と書かれている。
 10月の大統領選への正式な出馬表明直前に発行された同誌の記事は、ブラジル国内メディアの度肝を抜いた。同時に、最近のルーラ発言には「舌禍」を懸念する声も出ている。
 最新の懸念材料は今回のタイム誌の記事で、ウクライナへの軍事侵攻を決めたロシアのプーチン氏に非がある事を認める一方、「ゼレンスキー氏にもプーチン氏と同等の責任がある」とし、米国や欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)の責任にも言及した。
 ルーラ氏によると、ゼレンスキー氏や欧米諸国がNATOへの加入はないと明言していれば侵攻は起こらなかったはずだし、戦争回避に努める人がおらず、皆が火に油を注ぐような行動ばかりとっているという。
 「政治は対話」を持論とするルーラ氏は、自分が軍の責任者なら、各国首脳に電話をかけ、平和的な解決を探るとした上で、ゼレンスキー氏が世界各国に理解と支援を呼びかけ、拍手喝采を浴びた事も批判。「自分がテレビに出るために周囲を戦争に巻き込まないで欲しい」「プーチン氏と交渉を重ね、譲歩するべきだった」とも語った。
 だが、今回の発言が西側諸国からのひんしゅくを買う事は明らかで、ブラジル国内でも各方面から批判や懸念の声が出ている。
 最も懸念しているのは同氏の支持者達で、最近起きた中絶問題への言及や「ボルソナロ氏は我々が嫌いだが、警察は好き」発言、労働改革撤回宣言などに続く舌禍が、大統領選に影響する事を恐れている。
 PT関係者は選挙対策を確定する前にルーラ氏がインタビューに応じた事も大きなミスと見て、報道担当からフランクリン・マルチンス氏を外す見込みだ。グレイシー・ホフマン党首は、正式な出馬宣言後の今週末に選挙参謀と役割を確定すると約束したが、PTと連立を組む政党などからはルーラ氏の言動を批判する声も出ている。
 他方、ボルソナロ陣営は、ルーラ氏がこのような形でイメージを損なえば、メンサロンやペトロロンといった汚職疑惑を思い出させる事で自分達の点数を上げられると判断。6月頃には支持率調査でもルーラ氏と並ぶはずと見ている。
 このような見方を裏付ける一例はダッタフォーリャの調査で、12月は48%だったルーラ氏の支持率は3月には43%に低下。一方のボルソナロ氏の支持率は22%から26%に上昇した。同様の傾向は他の調査でも見られている。

★2022年5月5日《ブラジル》ボルソナロ大統領が米俳優ディカプリオに「黙れ!」=若年層の選挙登録が急増で=国境越えて左派芸能人が協力
★2022年5月3日《ブラジル》大統領選の最大争点は中絶か=ルーラが独断?! 左派陣営内でも異論 「議論だけでもタブー」との声も
★2022年4月19日《ブラジル記者コラム》プーチンとボルソナロが密談?!=ブラジルはロシアの味方なのか

最新記事