《特別寄稿》文協、国士館のコチア青年の広場――故村田重幸さんの四十九日に寄せて――ブラジル日本文化福祉協会 理事=林まどか(宗円)

故村田重幸さんの四十九日の法要の様子

 どっどど、どどうど~と、強い風が吹き抜け、透明な青空の広がる明るい日。2022年4月16日、コチア青年連絡協議会(コチア青年)で会長や相談役を歴任された故村田重幸さんの四十九日法要(満中陰)が、サンパウロ州サンロッケ市のブラジル日本文化福祉協会(文協)国士館公園内マレットゴルフ会場で行われた。
 最初に、ご遺族の希望で、水本宗法先生、中根瑞穂さんらにより、仏前に供茶が手向けられた。その後、前田進コチア青年会長をはじめとする多くの方々より、弔意の言葉が述べられた。
 そこで驚いたことは、故人を偲ぶ挨拶の中で、全員が「いかに村田さんがお茶が好きであったか」――というエピソードが語られた事である。
 そんな村田さんの遺志を継ぐ為に、4月3日のコチア青年の総会では、文協国士館公園内のコチア青年の広場に茶室の水屋を完成させることが決議されたという。そうして全員が、村田さんの霊前に誓って、喪が明けた翌週の月曜日から、さっそく工事を始められた。時間がないとばかりに――。
 コチア青年の広場は、2015年4月、木多喜八郎元文協会長が文協国士館公園内の広場をコチア青年に15年間無償貸与する取り決めをコチア青年と交わし、後任の呉屋春美前文協会長、現在の石川レナト会長がその約束を引き継ぎ、今に至っている。

 村田さんは、コチア青年の広場に自宅の茶室と庭を移築寄贈され、またコチア青年初代理事長の下元健吉氏の像なども、この森に設置された。
 ブラジルの市場には、コチア青年の皆様のおかげで、蔬菜、果実、鶏卵、花等の多角的生産物が出回っている。コチア青年の貢献は農業分野だけでなく、茶室の寄贈などを通じて、日本伝統文化の継承にもわたっている。コチア青年の子孫はこの地に日本文化を残そうと精進し、日々切磋琢磨しておられる。
 4月30日の文協評議員会で、山下譲二評議員長は、薩摩藩士、八田知紀の和歌を朗詠された。
 「吉野山 霞のおくは しらねども 見ゆるかぎりは みな桜なり」
 水本セルソさんや国井ジェルソンさんら多くの方々の思いで、この国士館公園が桜の名所となってきている。
 故西谷南風さんが「南米に一会有情のさくらもり」と詠まれたごとく、国士館公園がカルモ公園と並ぶ桜の名所となり、このブラジルの地に満開の桜を咲かせ、「日本の心」が次代に引き継がれることを願ってやまない。

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