インフレで中銀が孤軍奮闘=政府や議会とかみ合わず

中央銀行(Marcello Casal Jr/Agencia Brasil)
中央銀行(Marcello Casal Jr/Agencia Brasil)

 米などの食料品の輸入関税引き下げと、5月15日締めの広範囲消費者物価指数(IPCA―15)の上昇速度が4月より減速したというニュースが23、24日に連続で流れた。だが、物価上昇率は多くの市場関係者の予想を超えていた。
 輸入関税引き下げは国内価格の抑制が目的で、ディーゼル油の商品流通サービス税(ICMS)一律化の話と軌を一にする。どちらも、年12%超の高インフレと、コロナ禍に伴う失業者増や所得減、購買力低下といった動きの中で、政府や議会が行ったインフレ対策だ。
 だが、減免税は両刃の剣だ。それが各種社会保障制度の支援金額増額や年金受給者などへの13カ月給の前倒しといった政策と相互反応を起こせば、消費需要が増大し、インフレが加速するからだ。
 そうした中で、孤軍奮闘しているのが中央銀行(中銀)だ。中銀はインフレ率を目標上限以下に抑えられなければ、対策案を提出しなければならない。今年のインフレは昨年同様、目標上限を超える事が必至で、経済基本金利(Selic)の引き上げサイクルが予定期間を過ぎてもインフレを抑制できていない。来年の物価も目標上限超えと見られており、中銀通貨政策委員会の面々の心中や如何に。
 現状、中銀が採れる対策は基本金利引き上げ以外にない。基本金利はインフレ促進時には引き上げられ、経済減退時には引き下げられる。金利が上がれば融資などが受けにくくなり、市場に出回る通貨量が減る。金利が下がれば、融資などが受けやすくなって通貨量が増えるとされる。
 中銀はこの原理から金利を上げて通貨量を抑えようとしているが、政府や議会は通貨量を増やす方向で動いている。例えれば、中銀がブレーキを踏んでいるのに、政府や議会はアクセルを踏んでいる状態だ。
 中銀通貨政策委員会は直近の会議議事録でも今後の見通しを明確に示せず、金利引き上げサイクルを継続するとだけ述べた。政府や議会の動きに臍をかんでいる理事達もいるだろう。
 政府や議会が中銀と相反する動きをしながら、どうしてインフレ対策ができるのか。基本金利の調整だけで事を収め切れない内に国民や経済が疲弊すれば、今後の歩みはさらに遅くなる。国の今後を考えた対話と協調がここでも必要と言えそうだ。(み)

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