アマゾン失踪事件=ドローンで不法伐採を監視=反発した業者による犯罪か=市警が容疑者1人を逮捕=大統領「お薦めできない冒険をした」

熱帯雨林の奥深くにあるヤノマミ族の集落の一つ(Terra Indígena Yanomami/Leonardo Prado/PG/FotosPúblicas/2015)

 【既報関連】5日朝、アマゾナス州のヴァーレ・ド・ジャバリ地区で、英国紙『ザ・ガーディアン』寄稿者のドム・フィリップス氏と国立インディオ保護財団(Funai)元職員のブルーノ・アラウージョ・ペレイラ氏が失踪した件で、市警が容疑者1人を逮捕したと8日付現地紙、サイトが報じた。
 逮捕者はアマウリまたはアマリウドと呼ばれ、「ぺラード」というあだ名の男性だ。市警は7日までに5人から事情聴取を行っている。この男性は失踪した二人が最後に立ち寄ったサンラファエルという川沿いのコミュニティに住み、これまでも先住民への脅迫を繰り返していた。
 今回の件に関する捜査や捜索は難航しているが、警察は8日朝、使用が制限されている型の銃弾を所持していた事や二人の捜索活動を阻害するような動きを見せたため、アマウリ容疑者を現行犯扱いで逮捕した。
 サンラファエルは不法な手段や目的でアマゾン奥地に入ろうとする際の「入り口」で、金鉱夫や漁師、猟師、麻薬密売者がたむろしているという。また、同地域を知る人達は地元の人間を連れて行かないと危険な地域だから、少人数では立ち寄れないという。

先住民保護の欠陥を露呈した事件との見解を報じる7日付G1サイトの記事の一部

 ペレイラ氏は国境付近に住む余り知られていない部族も含む先住民やその土地を守るため、コンピュータやドローンなどを使って森林伐採などを監視できるよう、先住民達を訓練し、機材を整えるプロジェクトを統括していた。同地区に住む26部族の先住民6300人を束ねるヴァーレ・ド・ジャバリ先住民連合(Unijava)によると、同プロジェクトは環境保護団体のWWFブラジルの支援を受けている。
 だが、これを快く思わない金鉱夫や漁師、製材業者らは頻繁に、プロジェクト関係者を脅迫。ペレイラ氏やUnijavaの弁護士エリエジオ・マルボ氏らは再三、Funaiなどの施設への侵入や脅迫が起きたと当局に伝えていたが、十分な対応は行われていなかったという。
 以前ならFunaiを恐れていた不法伐採者らが、現政権の環境政策や先住民保護区を制限する動きなどを受け、大手を振って不法な行動を拡大中だと、Funaiも認識すると報じられている。
 連邦司法支援局は失踪事件を「先住民保護の穴露呈」とし、人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは「政府は失踪者や先住民問題に真剣に対応していない」と批判している。
 6日には、法定アマゾンで行方不明になった2人に対し、任期中に森林違法伐採を半ば放任してきたボルソナロ大統領は、「お薦めできない冒険をした」と揶揄して物議を醸している。

★2022年6月7日《ブラジル》アマゾナス州で英国人ジャーナリストが失踪=金鉱夫や製材業者から頻繁に脅迫も
★2022年6月8日《ブラジル》奴隷労働に耐えられず脱出=小屋住まいで12時間労働
★2022年6月8日《ブラジル》アマゾンで不明の2人の捜索続く=軍動員して川沿いの水路や陸路を
★2022年5月24日《サンパウロ州》波にさらわれた女性生還=皆が死んだと判断した後に
★2022年5月13日《特別寄稿》「ブラジルの水俣病」現状を調査=アマゾン違法採掘の水銀汚染被害=吉田邦彦(北大法学研究科教授・日本環境会議理事・協同総研理事)

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