《ブラジル》アマゾン失踪事件=焼いてバラバラにされた遺体発見=犯人の後ろに誰かいたのか?=高まる現政権への批判の声

鑑識のために連警本部に運ばれる遺体(TV Brasil)

 【既報関連】ペルーやコロンビアとの国境に近いアマゾン奥地のヴァーレ・ド・ジャヴァリで起きた、英国紙『ザ・ガーディアン』寄稿者のドム・フィリップス氏と国立インディオ保護財団(Funai)元職員のブルーノ・アラウージョ・ペレイラ氏の失踪事件は、15日夜の遺体回収で新局面に入った。動機や共犯者の有無の解明、二人が乗っていたボートの捜索などが続いていると15~17日付現地紙、サイトが報じた。
 「ドムとブルーノはどこ?」と書かれた顔写真入りのポスターを掲げた抗議活動が世界中に広がる中、遺体回収という最悪の結果を迎えた。遺族達はむしろ、「正義を求める戦い」の始まりとの思いを強くしている。
 この地域には文明と未接触の部族も複数いると言われており、アマゾンの中でも最も未開のエリアだ。特にブルーノ氏は長年、そんな先住民やアマゾンの環境を守る活動に従事してきた。
 それに対して、ボルソナロ大統領は「フィリップス氏は現地の人からよく見られてなかった」という。だが二人とも先住民からの信頼が厚く、ヴァーレ・ド・ジャヴァリ先住民連合(Unijava)は捜索にも全面的に協力したと報道されている。
 二人の活動は、先住民居住区では禁止されている森林伐採や金採掘、漁や猟、麻薬密売などの摘発や国際社会への不正発信にも繋がり、違法業者や密売人からの脅迫が頻繁に起きていた。
 今回の事件の逮捕者で、遺体発見につながる情報も提供したアマリウド・ダ・コスタ・オリヴェイラ容疑者(通称ペラード)も不法な漁で告発されており、ペレイラ氏と口論している動画などが流れている。
 ペレイラ氏は失踪直前も、5日の会合が問題を引き起こす可能性があるとの懸念を示していた。サンラファエルの部落で会う約束だった先住民リーダーが不在で、その妻と言葉を交わした後に次の目的地に向かう途中で消息を絶った。
 連警によると、ペレイラ氏は後方から迫ったボートからの銃撃で倒れ、腕に被弾したフィリップス氏もボートの中で殺されたという。ペラード容疑者らは二人の遺体を焼き捨てようとしたがうまくいかず、遺体をばらばらにして地中に埋めた。ペレイラ氏らのボートは砂袋を使って川に沈めたという。
 遺体は二人の遺品発見現場から3・1キロのアクセス困難な場所から回収された。腐敗が進んで、DNA鑑定による身元確認が必要なため、16日にブラジリアの連警本部に運ばれた。
 なお、現地捜査班は引き続き、共犯者の有無や犯行の動機、ペレイラ氏らのボートの行方などを捜査中だ。17日には連警が、容疑者達が独自に行った犯行で、犯罪組織は関与していないとの見解を表明した。だが、共犯者の有無などの捜査は今後も継続される。
 事件の舞台となったヴァーレ・ド・ジャヴァリはポルトガルとほぼ同じ面積を持つが、同地区に派遣された国家治安部隊員はたった6人。3年前に起きたFunai職員殺害事件など、先住民や先住民活動家、環境活動家が巻き込まれる事件は頻発しており、全国では1~5月だけで19人が殺されている。
 二人の遺体回収との報道後は、国内外で、捜索の遅れや現政権の環境、人権政策ならびに治安対策への批判、詳細な捜査を求める声がより高まっている。
 なお、遺体のDNA鑑定には最大で10日を要すとされていたが、連警は17日夕刻、歯形や治療の痕跡から、遺体の一つはフィリップス氏のものである事が確認されたと発表した。

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