日本移民の日のご挨拶=在サンパウロ日本国総領事 桑名 良輔

桑名良輔在サンパウロ総領事

 ブラジルにおける「日本移民の日」にあたり皆様にご挨拶申し上げます。
 1908年に笠戸丸がサントス港に到着してから、今年で114年になります。以来、日本から多くの移住者がこの地を訪れました。移住者とその子孫の方々は、日本から遠く離れたこの地において、不屈の忍耐と努力をもって道を開きブラジル社会の発展に大きく貢献し、この地における日系人さらには日本に対する高い信頼を築き上げました。
 様々な苦難を乗り越えて今日の繁栄を築き上げた先人の皆様方に改めて深甚なる敬意と感謝を表します。
 私がサンパウロに赴任して約2年が経過しました。この間、新型コロナの感染拡大により、日本祭りをはじめ多くの行事が中止を余儀なくされる等日系社会も大きな影響を受けましたが、対面での行事の開催が困難な中で、感染予防のためにIT技術を駆使してオンラインでのイベントを開催したり、宅配デリバリーを活用する等して日系社会は団結と創意工夫でこの難局を乗り越えてきました。
 この過程では、IT技術等の専門性を持った多くの若手が参加し、課題とされてきた若手の参画が進むといううれしい驚きもありました。
 当地の日系社会においては世代交代が進んでいます。活動の中心は、これまでの一世から二世、三世へと移り、そしてまもなく四世、五世の時代がやってきます。日本語を話さない方がほとんどですが、その一方で日本文化や日本的価値観を自らのものとして誇りをもって受け継ぎ、その継承に努めてくれています。
 日系若手リーダー達は自らの発意で議論を重ね、日系社会が継承する価値として「誠実」「忍耐」「敬意」「親切」「責任」「感謝」「学び」「協同」の8つのキーワードを導き出し、その継承に努めています。彼らは、日本で生まれ育った私たち以上に、日本を意識し、その本質を理解して後生に伝えようとしてくれているように思います。
 ブラジルは世界に冠たる多民族・多文化国家であり、イタリア系やシリア・レバノン系等の多数の移民がいますが、その中にあって「日系」の存在感は特筆すべきものがあります。多様な文化を寛容に受け入れるブラジル、そしてそこに深く根付いて大きく開花しブラジル社会の尊敬を集める日系社会は、今日外国人の受け入れなどを含め国際化を迫られている日本、そして私たち日本人に多くの気づきを与えてくれる存在だと思います。
 新型コロナもようやく落ち着きつつあり、入国規制も含め各種規制の緩和が進んでいます。来月にはサンパウロ日本祭りも三年ぶりに開催される等当地でも新たな日常が戻りつつあります。日系社会には、引き続き世代交代やパンデミックを契機とする財政難といった課題もありますし、また、帰伯日系ブラジル人の社会への適応等取り組むべき課題は数多く存在しますが、日伯の「架け橋」である日系社会は、両国にとってかけがえのない存在ですので、私ども在サンパウロ日本国総領事館としては、これらの課題も含めて、日系社会の更なる発展と日伯関係の強化のために、皆様と共にできる限り努力する所存です。

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