ブラジル日本移民114周年における貴紙ブラジル日報「移民の日特別号」の発行にあたり、まずは今日のブラジル日系社会の繁栄を築かれた先駆移民の御苦労を偲び、開拓先没者の御霊に対し衷心より哀悼の意を表します。
現在、約2年間にもわたり世界中を震撼させた新型コロナウイルスパンデミックも、ワクチン接種が功を奏してかようやく収束の兆しが見えて参りました。
しかし、パンデミックが宣言された当初は有効な手立てがなく、ただただ状況を憂うだけでございました。
そのような中、私は当時、同じように彼らにとっては未知の病であったマラリヤ、または風土病により次々と尊い命が失われていく事態に身を置いた戦前移民の方々が遭遇した、筆舌に尽くし難い状況の一端を垣間見た気が致しました。「しかも当時は今と違って何の情報も、そしてすがる医者もいなかった。向き合った不安と恐怖はどれ程のものだっただろうか」と。
こういった類似の体験を持った私たちは、本日、より深く移民先駆者の方々の御霊に寄り添っております。合わせて世界中の新型コロナウイルス感染症の犠牲となった方々に対し、心よりご冥福をお祈り致します。
さて、皆様ご存じの通り、本年はここブラジル国において、独立200周年という記念の年を迎えました。
我々日本移民の子孫は、我々のルーツである祖国日本を慕わしく思うのと同様、ブラジル日本移民114周年という歴史が紡がれる中に、ここブラジルに生まれた者としてブラジルを母国とし、限りない愛着を持ちながら同国独立200周年を祝しております。
今こうして我々が何不自由なく暮らしていられるのは、いかなる苦難困難にも負けずに誠実に働き、この地に基盤を築いてくださった先駆者のお陰であることはさることながら、我々の先人を受け入れ、この地に根付くことを容認してくれたブラジルという寛大な国があったからこそと、感謝の念に堪えません。
このように、「祖国」と「母国」をそれぞれ持つことを許された我々日系人は、それを大きな恵みと受け取り、今後益々日伯両国の強固な友好関係を築く架け橋となるべく尽力して参る所存でございます。
何より、将来的にそれを担う若者達が、このところ日系団体の運営・活動に積極的に参加する姿を多く見かけるようになりました。これは、先人たちの尊い遺訓がブラジル社会に名実ともに浸透している結果であるとともに、大きな希望であることを改めて本日、先駆者の御霊にご報告申し上げたいと存じます。
そして今後益々の発展のために、引き続き皆様のご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
最後になりましたが、一日も早いパンデミックの収束と、日系社会の皆様、ブラジル日報をご愛読の皆様のご健勝を祈念し、ブラジル日本移民114周年記念における私の挨拶とさせて頂きます。