【既報関連】アマゾナス州ヴァレ・ド・ジャヴァリ地区で消息を絶った英国紙『ザ・ガーディアン』寄稿者のドム・フィリップス氏と国立インディオ保護財団(Funai)元職員のブルーノ・アラウージョ・ペレイラ氏が殺害されていた事が判明後、環境活動家だった父を殺された環境保護論者のアンジェラ・メンデス氏が「殺せば殺すほど、私達は声を高める」と明言したと17日付G1サイトなどが報じた。
アンジェラ氏は1988年に殺された環境活動家でゴム採取人のシコ・メンデス氏の娘だ。シコ氏は、アマゾンでの土地所有者や牧場主達による森林破壊に反対して殺された。
アンジェラ氏は、父親の軌跡とフィリップス氏やペレイラ氏の軌跡は、アマゾンの環境やそこに住む人々を守ろうとして戦い、殺されたという意味で、また、その背景に鉱物採掘、木材伐採、家畜の飼育といった不法な活動があるという意味でよく似ているという。
フィリップス氏はどうすればアマゾンを救う事ができるかに関する本を執筆中で、ペレイラ氏と共に先住民部落を訪れ、先住民居住地で違法行為を繰り返している金鉱夫や製材業者、漁師、猟師の実態と先住民の苦しみ、ペレイラ氏の働きをつぶさに見てきた。
ペレイラ氏はその働きのために脅迫されていたが、シコ氏も1988年にアクレ州シャプリで殺されるまで常に脅迫を受けていた。
シコ氏はゴム採取人の組合を作り、森を一掃したい牧場主達が雇う労働者(ペオン)の野営地解体という戦略で森林破壊を食い止めようとした。シコ氏はそれで疎まれ、自宅で入浴しようとしていた時にライフルで撃たれて亡くなった。
当時19歳だったアンジェラ氏はフィリップス氏とペレイラ氏が失踪と聞いた途端、殺されたと思った。ブラジルは環境活動家殺害ランキング1位で、犯罪者が罰せられずに跋扈している国なのだ。
警察は不法な漁を行い、麻薬密売者とも繋がりがある漁師の仕業と見ているが、アンジェラ氏は製材業者も密売者と結託しているという。また、アマゾンに対する政府の態度や政策から見てもシコ氏とペレイラ氏らは似ているという。
軍政時代に土地を求めてアマゾンに辿り着いた人々は、ゴム栽培のために北東部などから来た人々で、以前からそこに住んでいた人々を殺し始めた。彼女によれば、現政権は独裁軍事政権のインターフェイスで、マニフェストや行動を通して暴力を奨励しているという。
彼女は2019年にパラー州で起きた「火の日」にも言及。同州ではこの日、監視機関の活動を邪魔しようとした人々が開発中の牧場や森林に放火した。農場主達は、監視機関を批判する大統領の言葉を自分達の計画を正当化し、推奨する力として受け止めたのだ。
同氏によると、今回の事件は環境活動家保護のために作られた国際条約のエスカス協約の国内での発効の緊急性を強めたという。この協約にはカリブ海とラ米地区の24カ国が署名。12カ国は既に発効した。ブラジルは2018年に署名したが、未発効だ。
フィリップス、ペレイラ両氏は殺された。だが、アンジェラ氏は「破壊者が活動家を殺しても、私達は生き、より声を高める」との表現で、彼らの死が森林を守るための運動を強化すると明言した。
彼女は今も、父の友人が語った「奴らはシコを銃で殺したと思ったが、彼は死んでいない。彼の考えは残り、彼は今も語り続けているからだ。彼の言葉が残っているなら、彼は生きている」という言葉を思い出す。
フィリップス氏とペレイラ氏の死は、2005年にパラー州アナプーの土地なし農民を擁護して殺された米国人修道女のドロシー・スタング氏の死と同様の効果を持つと考えられている。