「ボルソナロ政権はブラジルを国際的に『パーリア』な国にしている」。アマゾニア州ヴァーレ・ド・ジャヴァリで起きた英国人ジャーナリストとブラジル人先住民保護活動家殺害事件に対するボルソナロ大統領の対応について、現地メディアがそう警鐘を鳴らした。「パーリア」は社会的、宗教的な権利を剥奪されたインドの賤民を指す言葉で、社会から排斥された者という意味を持っている。
英国人ジャーナリストのドム・フィリップス氏とブラジル人先住民保護活動家のブルーノ・ペレイラ氏は、アマゾンを破壊し、先住民やその居住地を脅かす違法な活動を摘発したり、それを発信したりする働きをしていたが故に犯罪に巻き込まれた。
冒頭の記事では今回の事件にも触れつつ、現政権はこの3年間、アマゾン森林破壊の記録を更新し、先住民の生活や権利を無視した政策を行うことで、国際的に排斥されるように仕向け続けているとしている。
ボルソナロ大統領は当選直後からアマゾン開発を擁護し、先住民居住区での鉱物採掘を推奨する発言を繰り返している。また、先住民居住区は現行憲法発効時に認められていた区域に限られ、その後に制定された区域は無効とも主張している。
大統領がアマゾンを破壊し、先住民を虐げる事を容認している事は、「(ペレイラ氏達は)好ましくない冒険をしていた」や「現地ではよく思われていなかった」などといった発言にも表れている。
確かに、ペレイラ氏達は違法行為を繰り返す人達にとっては目の上のたんこぶであり、邪魔者だったが、先住民やアマゾンを思う人達には自分達の代わりに声を上げる代弁者であり、天使だった。
ブラジルはかつて環境問題や先住民居住区制定に積極的に取り組んでいたが、現在は様変わり。フィリップス氏は2019年に、アマゾン政策の転換についてボルソナロ氏を詰問しており、その様子は事件後、頻繁に報道された。2019年はマクロン仏大統領とボルソナロ氏の確執が始まり、法王による教会会議でアマゾンや先住民問題が取り上げられた年でもある。
連邦警察は「フィリップス氏は間違った時、間違った場所に間違った人と居た」ために事件に巻き込まれたと発言した。アマゾンを違法行為に満ちた危険な場所にしたのは誰か。森林伐採記録の更新も続く中、「パーリア」状態を抜け出すのは容易ではなさそうだ。(み)