犯罪発生予測技術をブラジルに=ミナス軍警と実証実験開始=シンギュラー社梶田さんら来伯

エドゥアルド・フェリスベルト・アウヴェスミナス軍警副総司令官と梶田晴司さん
エドゥアルド・フェリスベルト・アウヴェスミナス軍警副総司令官と梶田晴司さん

 地域の犯罪統計情報から未来の犯罪発生地点を予測するコンピューターシステム『Crime Nabi(クライムナビ)』。同システムを開発した日本のIT企業『Singular Perturbations(SP社、シンギュラー・パータベーションズ)』の共同創業者・梶田晴司さんと常盤木龍冶ブラジル事業部長が6月16日に来伯し、ミナス・ジェライス州軍警と同システムの導入に向けた実証実験を行っている。

 『Crime Nabi』は地域の犯罪統計情報や環境情報(空き家、人口密度、道路照明など)を独自のアルゴリズムで解析し、時間帯別に犯罪発生確率の高い地点をピンポイントで予測する。同システムを使えば、犯罪発生予測に基づいた効率的なパトロール経路の自動策定、スマートフォンの位置情報を用いたパトロール者の活動把握(サボり防止)、巡回日報の自動生成機能による業務負荷低減などが行える。
 同システムの開発は、統計物理学博士の梶田真実さんが2014年のイタリア滞在時、街角でスリ被害に遭ったことをきっかけに「海外における犯罪課題解決」のために始められた。
 当時は北米で同分野での起業が行われる様になった業界黎明期。真実さんは帰国後の17年、夫の晴司さんとSP社を設立。総務省や経済産業省、米IT企業『Google』日本法人の開発支援を受けて、『Crime Nabi』を完成させた。

パトロール担当警官向けシステム講習会の様子
パトロール担当警官向けシステム講習会の様子

 20年には名古屋市が、自治体主導で行う防犯活動『青色防犯パトロール』の効率化のために同システムを導入。防犯技術需要の高い海外への展開も進め、ブラジルでは今年1月、国際協力機構(JICA)の支援を受け、現地調査を初実施し、今回の実証実験へと繋げた。
 晴司さんらは7月12日まで滞伯予定。今回の滞伯では、日本企業のブラジル進出を支援するコンサルタント会社『BBBR』(倉智隆昌社長)と共に、ミナス軍警との同システムの実証実験、ベロ・オリゾンテ市警や聖州、パラナ州の治安当局とシステム導入に向けた実証実験実施交渉を行う。
 6月17、18日に行ったミナス軍警との実証実験のためのシステム講習会では、パトロール業務にあたる警官ら300人に『Crime Nabi』の使用方法を指導。同軍警総司令官ら幹部向け説明会も行った。
 梶田さんによれば、ミナス軍警が『Crime Nabi』導入を検討している背景には、JICAが同州への導入協力をした『交番システム』によって街の治安が向上し、日本の防犯技術に対する信頼感が強いこと、職員個人が所有するスマートフォンを業務に使用することが法的に認められており『Crime Nabi』が使用できること、鉄鋼産業が盛んな土地柄から先端技術を取り入れることに意欲的な州民が多くいることが挙げられるという。
 ミナス軍警では7~9月にかけて、ベロ・オリゾンテ市内のバレイロ地区とヴェンダ・ノヴァ地区で実証実験を行う。一方の地区では同システムを用い、もう一方では従来通りのパトロール活動を行い、効果を比較検証する。
 梶田さんらは滞伯後、同システムの導入交渉のためホンジュラス、ウルグアイへ向かう予定。

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