現在、下院で緊急審議中の複数の緊急支援策を一まとめにした憲法改正法案「PECカミカゼ」は、国際的な投資家の評判が悪く、さらなるインフレ高進や財政悪化などが懸念されている。「選挙法違反」などで連邦会計検査院(TCU)が捜査に乗り出す意向を示している。6、7日付現地紙、サイトが報じている。
「善意のPEC」とも呼ばれる法案は、ボルソナロ政権においては、選挙まで100日を切った段階での切り札的な選挙対策法案と目されている。これが承認されれば、今年末までに約412・5億レアルの支出が可能になる。
このPECが認められれば、福祉政策「アウシリオ・ブラジル」の最低支給月額は600レアルに上がり、トラック運転手へのアウシリオ(援助金)の支給やガス代への補助、高齢者に対する公共交通料金の無料化を保証するための地方自治体への支援などを行うことが可能となる。
同法案は6月30日に上院で承認。現在は下院で審議を行っている。上院でも賛成多数で決まり、下院でも承認は確実と見られていたが、ここに来て悪評が高まっている。
まず、投資家たちの間では国際的に同法案に対する評判が悪く、上院での承認以降、レアル安ドル高の状態が続いている。上院が承認した日のドルは5・19レアルから5・23レアルに上がり、約1週間後の6日は5・42レアルに高騰している。
ドル高の理由には、世界的な景気後退への懸念や原油価格の高騰なども含まれている。だが、カミカゼ法案に対する悪評も含まれている。ハーヴァード大学の研究員でもある政治学者フセイン・カルー氏によると、国際的な投資家たちは、カミカゼ法案に対し、「一貫性がない」と判断し、嫌っているという。投資家の中ではブラジルは「信用性、安定性、将来性」の三つに欠けた状態だと指摘されている。
こうした投資家たちの不信感がレアル安を招くのに加え、急な支援金の投入がさらなるインフレを招きかねないとの懸念の声も聞かれる。選挙前に国民を喜ばせようとしても、こうした一時的な支援では家計そのものは楽にならず、連邦政府の財政も悪化するとの予想も多くあがっている。
フォーリャ紙の報道によると、不信頼指数は既に69%に上がっているという。これはジウマ大統領の罷免が起きた2016年に記録した33%をも大きく上回っている。
また、カミカゼ法案は「特定の人に恩恵を施す」もので「財源が不明確」として、選挙法や憲法に違反するとの声も後を絶たない。TCUは既に、連邦検察庁と共同で、同法案に違法性がないかの調査に乗り出す意向を示している。仮にこれがこじれれば法案承認が遅れ、選挙での効果を狙いたいボルソナロ政権には痛手となる。
下院でのカミカゼ法案の審議は、報告官を務めるダニーロ・フォルテ下議(ウニオン)がアプリのタクシー運転手を優遇する条項を加えようとしたために遅れた。だが、それを盛り込めば上院での再審議が必要となり、早い承認を望む連邦政府が猛反対。現在は上院を通過したのと同じ内容のもので審議中だ。