8日早朝、日系社会に激震が走った。朝から伯国メディアは安倍晋三首相銃撃事件の報道で持ちきりになった。2014年8月に安倍氏が現役首相として訪問したブラジル日本文化福祉協会の正門玄関横には日の丸の弔旗が、ブラジル旗と共に半旗掲揚された。14年の訪問で安倍氏は、大講堂を一杯にした1千人以上の群衆全員と時間をかけて記念撮影し、JICA日系社会ボランティアの人数倍増を発表するなど、日系社会に対する篤い想いを感じさせた。元首相の人柄と功績をたたえるコメントが続々と届いた。
サンパウロ日伯援護協会(援協)評議員会長で、2014年8月に安倍首相が来伯した際に援協会長だった菊地義治さん(82歳、岩手県出身)は、当時の安倍首相との懇談会で「もっと日本の医療機器の販路を中南米に広げたい」と同首相が話していたことが印象に残っているという。
「(来伯当時)、日系社会の皆さんと気さくに記念写真を撮っていただいたり、庶民的な人でしたね。中南米の日系社会にも力を入れてくれましたし、大きな損失です」と話した。
長崎県人会前会長の川添博さん(74歳、長崎県出身)は「中国との関係など、今、日本が大変な時に本当に困った。残念至極です。ウクライナ戦争問題もあるし、対話の時に居てほしかった方です。それにしても元総理が公衆の面前で撃たれるとは。今の日本はあまりにも平和ボケしているように思います。安倍さんの遺志を引き継いで、残された人は命を懸けて日本の政治に取り組んでいただきたい」と残念な思いを寄せた。
サンパウロ市内に住む大野正人さん(75歳、香川県出身)は「人柄も優しく、偉大な政治家で、国民のために一生懸命やった人でした。しかし、日本でこんなこと(銃撃による死亡)が起きるのが信じられない。コロナ禍や、ウクライナ戦争もあり不安が大きい中、日本も安心できないという意味で世界の見る目も変わるのでは」と率直な気持ちを語った。
14年来伯時、イビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑の清掃係として、間近に安倍首相の振る舞いを見た村崎道徳さん(92歳、二世)は、「安倍さんの参拝は実に立派でした。日本を代表する偉い人だと、立ち振る舞いから分かった。あれぐらいの政治家は他にいない」と振り返る。
さらに「世の中おかしくなってしまった。あの立派な人が殺されてしまうなんて。親から日本の素晴らしさを口を酸っぱくして説かれてきて、そうであってほしいと私も願ってきたが、今の日本にはがっかりだな。日本は大きな節目を迎えている」としみじみ述べた。
2014年8月の安倍晋三首相来伯写真グラフ