【既報関連】9日にパラナ州で起きたルーラ元大統領の労働者党(PT)党員の殺害事件で、ボルソナロ大統領は無関係を主張している。だが、支持母体である中道勢力などは大統領よりも強く反対する姿勢を見せている。11、12日付現地紙、サイトが報じている。
パラナ州フォス・ド・イグアスーで起きた、PT会計のマルセロ・アルーダ氏殺害事件は、犯行時に「ボルソナロ参上」と宣言したほどの大統領支持者であったことで、ことさらに物議を醸した。
フォーリャ紙の報道によると、10日の午前中には全国的に知れ渡った事件に関し、大統領側近はボルソナロ氏に見解を述べるよう急かしたという。だが、大統領が声明を発表したのは、10日の夜遅くだった。
ボルソナロ氏は声明で「暴力を振るう人の支持はいらない」と語ったが、これは2018年の自身の大統領選キャンペーンのときに使った言葉を繰り返したのみで、アルーダ氏や遺族への弔いの言葉はなかった。それどころか、大統領は同日、ツイッターで「左派の方が右派よりも暴力をふるう」との発言まで行っている。
また、ボルソナロ氏に近い政治家らも、今回の事件をネット上で批判する政治家や評論家に対し、反論や批判を試みているという。ボルソナロ氏の場合は以前から、次男カルロス氏をはじめとする息子たちや支持派の政治家たちがこうしたネット上での展開を率先して行ってきた。
支持政治家たちは、「ボルソナロ大統領になってからの殺人事件発生率は低い」などの持論を展開。中には「PT支持者が批判をしたところで、2018年の大統領選キャンペーンでボルソナロ氏が刺傷被害にあったことが反論として持ち上がるから大統領へのダメージはさほどでもなくなるだろう」との見解まで見せている。
また、アミウトン・モウロン副大統領も今回の事件に関し、「週末で全国的に起こっている殺人事件と何も変わらない」と気にしない姿勢を見せている。
だが、国民の多くはそうは見ていない。それは今回の殺害が、2018年にボルソナロ氏が大統領キャンペーン中に行った「フジラール・ペトラリャーダ」という発言が引き金になったと唱える説が目立つためだ。これは「PTの不正分子にマシンガンを」という意味で、ボルソナロ氏はこの言葉と共にカメラの三脚をマシンガンに見立てて撃つふりをするパフォーマンスを行っており、「この言葉が実行に移されたのでは」ということだ。
そうした懸念は連邦議会も示している。ボルソナロ氏の支持母体である中道勢力セントロンの最大党・進歩党(PP)のアルトゥール・リラ下院議長は容疑者の殺害行為を強く批判し、「平和と寛容を」と訴えた。ロドリゴ・パシェコ上院議長(社会民主党・PSD)はルーラ氏とボルソナロ氏の2人で得票の80%以上を占めることを指し、「彼ら2人の責任は重大だ」と対立を煽らぬよう釘を刺した。
ブラジル全国司教会議(CNBB)も、「喜びと友愛の場を暴力に変える狂気はあってはならない」と事件に強く抗議している。