ボルソナロ大統領は18日、約70人の各国大使や代理を招き、「過去の選挙におけるブラジルの不正」に関する持論を訴えた。既にフェイクニュースと知られている情報を国際的に拡散しようとする行為は、専門家が「逮捕や罷免もありうる」との声をあげるほど問題視され、批判が相次いでいる。18、19日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領は大統領官邸に世界各国の大使たちを集め、2014、2018年のブラジル選挙に関して「不正」があったとの主張をした。この会合は大統領の公務の予定外の行事で、壇上で話したのもボルソナロ氏だけだった。
大統領は主に、2018年の大統領選で起こった投票機でのハッカー疑惑に関する不満をぶちまけた。この疑惑は公式には、最終的に不正は確認されなかった。
それだけでなく、大統領は2021年8月に、同件に関する連邦警察の守秘事項の捜査内容をネットでのライブ放送で読み上げたことで、逆に訴えられている。この件の拡散ではパラナ州の大統領派州議、フェルナンド・フランシスキーニ氏が罷免されている。
だが、大統領は今回も、「投票機が8カ月間もハッキングされていた。有権者が票を投じた人の名前を変えられた恐れがある」と、証拠も見せずに主張した。
また、前、現選挙高裁長官のルイス・ロベルト・バローゾ、エジソン・ファキン両氏、8月から長官となるアレッシャンドレ・デ・モラエス氏の3人の最高裁判事を批判。「彼らは軍からの改良案を無視し、国に不安定な状況をもたらそうとしている」と発言。バローゾ、ファキン両氏に関しては、現在の世論調査で支持率1位のルーラ元大統領との距離の近さも主張した。
この日も「ルーラ氏を釈放した」という事実とは異なる発言を名指しで行われたファキン選挙高裁長官は同日中に、これらの発言は「ばかげたもの」と不快感を示し、電子投票機による票集計の安全性を改めて訴えた。
この日の会合は、モラエス判事がボルソナロ派のインフルエンサー(ネット上で影響力のある人)に対し、ルーラ氏の労働者党(PT)と犯罪集団の州都第一コマンド(PCC)が深い関係にあるとするフェイクニュース投稿を削除する命令を出した直後に行われている。
今回の会合に関しては支持者と反対派の双方から強い非難の声があがっている。ジャーナリストのルイス・コスタ・ピント氏は「世界各国の代表の前でブラジルに関するフェイクニュースを流した。国の機能がまともな状況なら謀反罪で逮捕され得る」と酷評。法学者のマルセロ・ウショア氏も、「逮捕や緊急の罷免、停職が行われても不思議ではない」と、その行為を問題視した。政界からも次々と抗議の声があがり、最高裁に提訴したグループも出た。
会合には連邦政府の閣僚が多数参加し、国営放送のTVブラジルでも放送された。だが、司法関係者の出席はなく、何人の大使や代理が出席したのかの正式発表もなかったようだ。参加した大使たちからは、「ドナルド・トランプ氏の真似事」「インパクトはなかった」などの声が聞かれたと報じられている。
□ひとくちコラム□
18日にボルソナロ氏が大統領官邸で各国の大使たちの前で行った選挙不正の訴えは国民から厳しい評価を受けているが、ネット上では大統領を批判してからかうミーム(冗談画像)が溢れている。
その中には、大統領がパワーポイントを使って行ったプレゼンで英語の誤字が多かったことをからかうもの、パワーポイントの内容を「ルーラ当選→私は逮捕→助けて」と差し替えたものなどが見られた。
また、アフリカの大使と思われる黒人女性が腕を組んで怪訝そうな顔をした写真も拡散された。ブラジルではおなじみのユーモアあふれる大統領批判だが、ボルソナロ氏にとっては笑い事ではないか。
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