酸性化で微小生物生きられず=進行する「死の海」現象

海洋の酸性化で骨格が崩れたサンゴ(「海の豊かさを守ろう」と題したサイトより、https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/life_below_water_sdgs/7231/)
海洋の酸性化で骨格が崩れたサンゴ(「海の豊かさを守ろう」と題したサイトより、https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/life_below_water_sdgs/7231/)

 NHKの17日付の番組「海の異変~しのびよる酸性化の脅威~」で、人間の活動で放出された二酸化炭素が増え過ぎて海が酸性化し、その影響で翼足類と呼ばれるプランクトンや貝の殻が溶け、食物連鎖に影響が出ている事を知った。
 二酸化炭素が海洋酸性化を起こすとの記事は以前も読んだ事があったが、今回は映像もあり、大きな衝撃を受けた。
 番組によれば、海洋酸性化は地球温暖化の影響が最も顕著とされる北極海だけでなく、米国近海や東京湾でも起きているという。酸性化した海では、微小生物の体は溶け、正常に成長できなくなるため、個体数も減少。食物連鎖に狂いが生じているという。
 5600万年前、大規模な地殻変動によって海底からマグマが噴出し、海洋が非常に酸性化した時期があった。この時は海中で植物プランクトンが大量発生し、光合成を行うことで二酸化炭素を消費し、17万年をかけて酸性化した海をもとに戻した。
 大量発生した植物プランクトンは、動物プランクトンに食され、減少し、動物プランクトンの遺骸や糞は有機物として海へ還元されていく。こうした自然の仕組みを「生物ポンプ」というそうだ。
 海洋酸性化は人間の活動だけでなく、火山性のガス噴出でも起きている。ガス噴出によって酸性化した海域には微小生物の存在は皆無に近く、それを食べる魚もいない、「死の海」となっている。
 海に溶け込む二酸化炭素が今同様のペースで増え続ければ、80年後には世界の海が「死の海」と同程度まで酸性化するという。
 人間の活動で生じる二酸化炭素増加で海洋酸性化が起き、「死の海」を生む可能性があるとは、人間はいかに愚かかと思わされる。最初の内は他の事をしながら聞いていたので、メモも十分に取れなかったが、海水がpH7・7より酸化するとオキアミの卵の孵化率が急に悪化するとの話には背筋が凍った。
 欧州などはかつてない熱波に襲われ、熱中症患者や死者の増加、火災多発などに悩まされている。海洋の二酸化炭素吸収能力が落ちれば地球温暖化は加速する。自分で自分のクビを絞める状態に地球や人間がどこまで耐えられるかはわからないが、酸性化した海水を健全な状態に戻すには時間がかかる。1日も早い方向転換と積極的な取り組みが求められている。(み)

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