《ブラジル》民主主義擁護声明に32万人が署名=ボルソナロへの牽制強まる=目立つハッキングでの抵抗

セウソ・デ・メロ氏(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

 【既報関連】大統領選に疑問を呈し続け、クーデターを起こす可能性を懸念されているボルソナロ大統領に対する「法治民主国家擁護に関するブラジル人への手紙」(https://estadodedireitosempre.com/)は28日、午後5時現在で32万人以上の署名を集めるほど高い注目を集めている。ところその署名サイトはハッキング行為が2300回以上記録されるなど、大統領派も刺激している。27、28日付現地紙、サイトが報じている。
 この手紙(公開書簡)の内容は、大統領選での宣伝行為と解釈されることを避けるべく、左派が良く使う「クーデター(ゴウピ)」などの言葉は使わず、中立的な言葉遣いで書かれている。ボルソナロ氏の対抗馬で現在支持率1位のルーラ元大統領の主張に沿うものや、ボルソナロ氏を名指しで批判する記述も排除するなどの配慮がなされている。
 サンパウロ総合大学(USP)法学部が管理している同サイトへの署名は26日午後の時点で3千人を超えていたが、この件に関する報道が相次いだこともあり、アクセスが殺到。27日午後5時までの24時間での署名数は16・5万人を超えており、総アクセス数は450万回を記録した。
 27日までの時点での署名者も企業家、銀行家、芸能人、ジャーナリスト、司法関係者の名前が目立つ。最高裁の元判事は12人が署名に応じている。
 8月11日にUSP法学部の校舎で「手紙」を読み上げる予定者で、2020年まで最高裁の長老だったセウソ・デ・メロ氏はこの反響に関し、「一国の元首としてのボルソナロ大統領が行った最高裁や選挙高裁への攻撃が、民主主義や憲法で許される限度を超えているということだ」「民主主義体制下で、国の政治機関が憲法や共和国の法律を尊重する義務を果たさず、特定の個人や集団、機関の意思を通そうとすれば、生き残れないということを認識しなければならない」と主張している。
 この署名運動は社会的関心が高い一方、専用サイトには27日までに2340回のハッキング行為も行われたという。ハッキングは「サイトにアクセスさせなくする」「誹謗中傷を書き込む」「(署名活動の信用性を落とすために)故人や架空の人物での署名を試みる」などで、ボルソナロ大統領の支持者の行為と見られている。
 今回の署名では公正さが特に重視されており、署名を行ったコンピューターのIPアドレスを記録し、納税者番号(CPF)の入力を必須とするなど、虚偽署名をやりづらくする工夫が施されている。
 これに対する連邦政府の出方が注目されている。28日付エスタード紙サイトによると、連邦政府はなおも次期選挙高裁長官のアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事にかけあい、軍に集計を管轄させるよう説得する意向だという。
 だが、前陸軍司令官のパウロ・セルジオ・ノゲイラ国防相は26日の米州機構国防相会議で「民主主義に従う」と宣言した他、軍裁判所のルイス・カルロス・ゴメス・マットス長官も27日、「軍が選挙運営に関与する必要性はない」との発言を行っている。

最新記事