ボルソナロ大統領(自由党・PL)が、今回の大統領選で落選した場合の逮捕を極度に恐れていると報じられている。連邦議会のボルソナロ派は落選したときに備え、憲法改正法案(PEC)で「特別上議」にすることで逮捕を逃れさせようと画策しているなどと、2日付現地紙などが報じている。
ボルソナロ氏が逮捕を恐れていることは、本人もかねてから公の場で語っている。最も有名なものは昨年の9月7日の独立記念日に支持者を煽って反民主主義、反最高裁デモを行った際の、「逮捕などされてたまるか」「大統領を降りたら、逮捕か、死か、栄光だ」との発言だ。
2日付フォーリャ紙では、ジャーナリストが取材した4人の全く別の関係筋のいずれからも、「ボルソナロ氏が逮捕を恐れている」との証言を得たと報じている。連邦政府とは関係のない政治家の知人は、ボルソナロ氏が「簡単に逮捕させないよう対策を練っている」と語っていたと証言している。
さらに連邦政府の2人の閣僚が語ったところでは、ボルソナロ氏は「大統領を降りたら複数の嫌疑で逮捕されてしまうだろう」と話したという。その時の様子は焦っているようでもなく、淡々としたものだったと報じられている。
さらに同じ閣僚によると、ボルソナロ氏は「ルーラ氏やテメル氏のような形では逮捕されないよ」と語ったという。ルーラ氏はラヴァ・ジャット作戦の裁判で収賄容疑などで580日、テメル氏は10日にも満たない長さではあったものの、大統領任期後に2度逮捕されている。
ボルソナロ氏が逮捕される可能性として最も起こりそうだと見られているのが、先月18日に世界各国の大使や代表たちの前でブラジルの選挙システムに関する偽情報を拡散したことだ。虚報拡散は昨年8月に18年大統領選での選挙システムの捜査に対する連邦警察の捜査内容を漏えいした時にも起きており、問題視されている。
また、連邦検察庁内のボルソナロ派の筆頭株のリンドーラ・アラウージョ副長官が昨年の上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)でのボルソナロ氏の全ての疑惑に対する捜査打ち切りを求めた件も、方々で強い反発を招いており、最高裁が受け入れるかは疑問視されている。
これらに対応するため、連邦議会のボルソナロ派が緊急でPECを準備しはじめているとの報道が先月末から流れている。それは、上院に大統領経験者に対する「終身役職」(cargo vitalicio)を設けることで、不逮捕を義務付けられた公職特権(フォロ・プレヴィリジアード)を喪失しないようにするというものだ。
このPECは昨年の時点で提案はされていたが、審議されずに止まっていた。だが、ここに来て、ボルソナロ派の議員たちが審議開始を求め始めている。だが、このPECに関しては司法との相談が義務付けられているため、成立させるのは困難との見方もある。