東京都から120KM離れた伊豆大島(東京都)にある私的財産「富士見観音堂」が、宗教法人化に向けて動きだしている。
同観音堂は日本から海外に移民した先亡者の慰霊施設で、日本海外移住家族会連合会専務理事・事務局長を退職後に仏門に入った故・藤川真弘(しんこう、俗名=辰雄)師が建立した。
現在は観音堂の堂守(どうもり)を務める伊藤修真(しゅうしん)氏(71歳、神奈川県出身)が関連施設の修繕活動を行っている。しかし、個人では活動に限界があるため、藤川師の親族にも役員として就任してもらうことを承諾してもらい、宗教法人化することとなった。今後は会員(信徒)からの寄付を募り、施設の修復のみならず納骨堂建立などの活動も行えるようにする意向だ。
藤川師は、移住家族会連合会在職時に、ブラジルをはじめ中南米に渡った多くの日本人移民が無縁仏として異国の地で亡くなったことを知り、退職後の57歳で仏門に入った。自ら奔走して寄付を募り、1978年に富士山の見える伊豆大島に私的財産として「海外開拓移住者菩提・富士見観音堂」を建立した。
しかし、藤川師は南米での移民供養の旅の途中だった86年に、アマゾナス州パリンチンスの川で行方不明になった。藤川夫人が観音堂の管理等を行っていたが、94年に他界。その後、マナウス市に住んでいた経験を持つ写真家の佐々木美智子氏が観音堂の手入れや供養を行ってきた。
その後、佐々木氏が諸事情で管理が継続できなくなり、アマゾン移民でもある伊藤氏が2013年から堂守を引き継いだ。その間、日本ブラジル交流協会研修生OB会「日伯かけ橋の会」が1年に1回、観音堂施設の清掃作業等を欠かさず行ってきた。
しかし、それぞれに個人の仕事等があるため、常時、観音堂に泊まり込んで管理ができるわけではない。神奈川県横浜市に住む伊藤氏が不定期に、自費で伊豆大島を訪問して管理してきたが、施設周囲は竹やぶに覆われるなど荒れ放題。また、お堂の屋根は雨漏りがひどく、抜け落ちた床を何度も補修してきた伊藤氏だが、個人で管理・整備を継続するには限界がある。そのため、このたび、藤川師の親族にも役員としての就任承諾を得て、開山を藤川師とした宗教法人「富士見山 観音堂」と銘打って宗教法人化し、会員(信徒)からの寄付を募る形で今後の継続を図っていくという。
伊藤氏によると、法人口座の開設は数年後になる予定だが、年会費は5千円で、初年度の会員募集は80人。会費納入は法人口座開設時となり、ブラジル進出企業および縁(ゆかり)の国会議員、日伯議員連盟のほか、広く一般に寄付を募っていく考えだ。
伊藤氏は「日本人海外開拓移住の先亡者、とりわけ多くの無縁の御遺骨は現在も定かでなく異国の野に眠っております。そして、その子孫が母国に戻り、『出稼ぎ』と呼ばれ、いわれの無い差別や困難の中で再び無縁の仏となる事が現行しております。伊豆大島富士見観音堂は終わる事なく続く日本人移民の歴史の桎梏(しっこく)からの解放を祈り続けて行かなくてはなりません。私は仏法に帰依した者でありますが、国境からも国籍からも解放された若者たちのために、これからも精進していく所存であります。また、お堂修復のみならず、今や故郷日本で無縁の仏となる方々のため速やかに、納骨堂の建立をいたしたく祈願するものであります」と、観音堂の宗教法人化の意義を説く。
会費の申し込み受け付けは伊藤氏(mailto:srsemente@yahoo.co.jp)まで。
詳細は次のホームページサイト(https://www.fujimikannon.com/blank-2?fbclid=IwAR3EQBXSaQXziqzzxtik9Qq302K33cmv6Ib6OuCBBtcBTOg72aaLsFjpVOk” \t “_blank)で。